企業信用調査とは?帝国データバンク評点に目安はあるか

企業信用調査とは?帝国データバンク評点に目安はあるか

企業信用調査とは?

あなたは、企業信用調査がどのようなものかご存じですか。企業信用調査は企業与信調査とも呼ばれます。

与信とは、融資や信用取引などの融資に関する枠を供与すること、信用を与えるという意味です。具体的に言うと、その企業がいくらまでなら取り引きできるか、いくらまでなら物を購入できるかという金額のことです。

企業信用調査の考え方

例えば、ある上場企業A社が、年間売上5,000万円の中小企業B社に対して5億円の商品を販売する場合、この取り引きが成立すると考える人は少ないでしょう。

では、もしB社がある理由で最近事業規模を縮小しただけで、現預金が10億円あるとすればこの取り引きはおそらく成立します。

また、A社が年間売上200億円の上場企業C社に5億円の商品を販売する場合、こちらも取引は成立すると考える人が大半でしょう。

もし、C社が10期連続赤字で債務超過に陥っており、金融機関からの信用がゼロ、貸し剥がし真っ最中の状態だとすれば、この取り引きは成立しないでしょう。

会社の状態というのは、フタを開けてみないとなかなかわからないものなのです。もしもA社が何も考えずに、支払い能力のない会社と取り引きを続けると売掛債権が増え続けます。

売掛債権の回収は非常に難しい上に、回収コストもかかります。これでは入ってくるキャッシュの予測がつかず、会社経営ができなくなってしまいます。

企業信用調査会社とは

このような状況に陥ることを防ぐため、A社は取引先の与信状態を知りたいはずです。

そこで、A社に代わって企業与信状況を調査してくれる会社が企業信用調査会社です。

信用調査会社が具体的に活用される状況は、融資、手形割引、リース取引などの他に、上記のような高額商品の通常取引が行えるかどうかを知りたい場合です。

日本国内で全国展開する企業信用調査会社は、国内最大手の帝国データバンクと東京商工リサーチがほぼ独占しています。

帝国データバンクはどのように調査を行うのか

では、国内最大手の帝国データバンクは何を調査し、どのように発表しているのでしょうか。

帝国データバンクは、A社からX社に対する企業信用調査の依頼を受けると、調査員がX社に訪問し、X社社長に対して取材形式のヒアリングを行います。

ヒアリングした内容は、評価担当者が帝国データバンク独自の評価基準によって、採点評価(評点)と各内容のレポートをまとめます。

依頼者(A社)は非公表(調査員もわからないらしい)、X社は調査レポートや評点は見せてもらえますが、評価方法やその基準になる考え方は教えてもらえません。

帝国データバンクが評価する内容

帝国データバンクが、何を以ってどのような基準で評点を付けるのかは公表されていませんし、調査員も細かな評価基準までは把握していません。

帝国データバンクの評価は、財務状況を中心に業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、経営者、企業活力の項目を100点満点で評価しています。

ちなみに、レポートとして得られる信用調査報告書の主な項目は以下です。調査時は、その他雑談も交えつつ色々な話をすることになります。

—–
企業概要|商号・住所・資本金・事業内容・売上高など
評価|信用要素別の評点内訳および評点
登記|発行株式、資本金推移など
役員|役員の氏名および担当業務など
大株主|大株主および持株数
従業員|職務別男女別の従業員内訳、従業員数の推移など
設備概要|本社・工場・営業所・寮・各種設備等の概要
代表者|氏名、経営者タイプ、後継者状態など
系列|資本・人的関係、関係会社など
沿革|年月別の企業沿革
業績|決算期毎の売上高・経常利益等の業績推移
取引先|主要仕入先、仕入先概数、支払方法、主要得意先、得意先概数、回収方法など
銀行取引|取引金融機関名と借入金額、担保状況など
資金現況|回収状況、支払能力・資金調達余力など
不良債権|未償却の不良債権および処理方法
現況|事業内容、会社の特色、業績推移、資金現況など
見通し|最近の動向と見通し
貸借対照表|貸借対照表の概要など
不動産登記写|物件、担保権等の設定状態
—–

帝国データバンクの評点の考え方

評点要素(レポート)は大きくわけて、業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、代表者、企業活力の7つ。

評点要素は、帝国データバンクが持つ140万社以上の企業情報分析から、業種毎の評価基準を設定して行われます。同じ評点の企業でも内訳によって全体評価は変わるので、評点が絶対値だとは思わない方が良さそうです。

例えば上場企業でも、業歴の浅い企業では高い評点にはなりにくいそうですし、代表者の先を見据える姿勢によっても評価が変わります。評点は100点満点ですが満点の会社はありません。

どちらかというと50点平均とした偏差値のようなものだと思ってください。ただし、50点未満は以下の様に記号で表記されます。

—–
47-49:D1
44-46:D2
40-43:D3
1-39:D4
—–

これを踏まえた上で、各評点がどのような評価なのかざっくりと解釈してみます。

評点90点以上

超々優良企業で、日本を超えワールドワイドで事業を行う企業が該当します。90点以上の企業は常にいるわけではありませんが、トヨタや資源系、インフラ系など、その時代で優秀な会社が90点以上になる場合があります。

評点81-90点

超優良企業で、安定した黒字を出す企業が入る場合があります。誰もが知っている大企業でもここに入ることは稀です。

評点66-80点

いわゆる優良企業です。健全な経営状態にある大企業がここに入ります。どれだけ経営状態が良好だったとしても、中小企業でここに入ることは稀です。

評点55-65点

健全な経営状態にある企業です。ちなみに私が知っている会社は売上が25-30億、利益率が5-8%、10年連続増収増益で変動費割合もそこまで高くないのですが、評点は55でした。中小企業であれば、この評点は非常に良い評価と言えます。

評点48-54点

中小企業であれば悪くない評価、大企業であれば評価は良くないと言える点数帯です。中小企業が50点を切ることは珍しくない、むしろ当たり前なので、この評点であれば手放しではないにしろ取引に心配はないと思います。

評点47-49点(D1)

中小企業であれば平均以上の会社ですが、企業倒産数から考えると優秀な部類に入ります。逆に大企業でこの評点は悪いと思います。

2014年3月に国税庁が発表した「平成24年度分法人企業の実態(会社標本調査)」では、赤字会社は調査法人全体(253万5272社)の70.3%の177万6253社となっています。

参考:
日本の企業数、倒産件数、赤字会社の割合、上場企業数など

評点44-46点(D2)

中小企業で一番多いのが、D1、D2評価ではないかと思います。D2は簡単には銀行融資が通らなくなる評価です。大企業との取り引きの際も、この辺りだと厳しく見られる場合が出てきます。

評点40-43点(D3)

社員数が少ない零細企業はD2、D3に多くなると思います。売上が少ないため、経営が安定していても先がわからないという評価でD3がつくことは多いでしょう。

評点39点以下(D4)

中小企業でこの評点の場合、倒産リスクが高いと言われている評価です。ただし、実際に倒産するかどうかはフタを開けてみないと誰にもわかりません。

帝国データバンクの評点はどれ位信用できるのか?

帝国データバンクの評点は、事業内容が適正かどうかを評価するものではありません。

たまに、「なんでうちがこの評点なんだ!」という憤りの声も聞こえますが、評価方法は帝国データバンク内部しかわからないため、どうすることもできません。

ただ、世の中の法人の70%は赤字なので、例え評点が40点未満だったとしても、社会に必要とされる会社であれば規模が小さいだけで倒産リスクは少ないということもあります。

逆に30年黒字を続けていて評点60点以上の会社でも、2代目社長がダメ経営をしてしまえば5年で倒産してしまうこともあります。

平成21年から平成26年9月までの企業倒産件数は、7万社を超えています。理由は様々なのですが、大きく分けると9つに分類されます。

平成21-26年9月までの原因別倒産状況

参考:
過去5年の企業倒産件数と推移、9つの倒産原因

帝国データバンクの信用調査は断れないのか?

売上がそれほど良くないし利益も出てない。借り入れもあって業績も浅い。

そんな社長はなるべく会社の情報を公開したくないはずです。しかも調べられてしまうと、取り引きにも影響が出てしまうかもしれない……。

では、信用調査会社から来た取材の依頼を断っても良いのでしょうか?いくつかの観点から見ていきます。

信用調査に対して1.取材に応じて、特別なメリットはない

取材は社長の貴重な時間を使って行われますが、ぜひ公開して欲しいという業績の会社以外はメリットはありません。

信用調査に対して2.取材に応じることは義務ではない

あくまでも民間の調査会社が行っている信用調査なので、取材は断ることもできます。

信用調査に対して3.取材を断ると評点が下がるかも…

信用調査会社は不特定ランダムに取材を行っているわけではなく、信用調査依頼によって取材を行っています。

そのため、取材拒否をしてしまうと調査依頼主にその旨は伝わります。また、取材をしない情報のみで調査報告書を作るため、辛めの評点になることは想像できます。

信用調査に対して4.できる社長であれば評点が上がるかも

あくまでも取材形式なので人の印象は非常に重要です。面倒そうに対応する社長と会社の未来を見据えた話をする社長であれば、圧倒的に後者の方が印象が良くなります。

圧倒的です。(大事なことなので二回言いました)

企業信用調査会社帝国データバンクの評価の目安まとめ

帝国データバンクにしろ、東京商工リサーチにしろ、一民間会社の信用調査であることは間違いありません。業績が悪くないにもかかわらず、評価が良くない企業がたくさんあることも事実です。

そのため、「お前らにうちの何がわかるんだ!」と、これらの取材をすべて断っている社長もいらっしゃいます。

ただ、企業信用調査会社の結果を元に融資や手形、リース、取り引きを行っている企業もたくさんあります。

もし、あなたの会社がBtoC事業で信用調査が関係ない場合や、取引先との人間関係が良好でオープンな会社運営をしているならば、取材を受けない姿勢を貫くことは全く問題ないでしょう。

そうでなければ、信用調査取材はなるべく受けた方が良いと思います。

もう一度言いますが、帝国データバンクや東京商工リサーチが取材に来たいと言うことは、誰かがあなたの会社の信用調査を依頼したということです。

帝国データバンクや東京商工リサーチなどの取材を断る場合は、関係者や現在の取引状況などをよく考えてからにしましょう。

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