労働分配率と売上高人件費率で適正な社員給与を決める方法

労働分配率と売上高人件費率で適正な社員給与を決める方法

売上高人件費率と労働分配率は人件費を算出する大事な指標

会社が適正な人件費を算出するための指標は大きくわけて2つ存在します。それが、売上高人件費率と労働分配率です。

売上高人件費率は以前お話しましたが、意味と計算式は以下の通りです。

売上高人件費率(%)=人件費÷売上×100

売上高人件費率とは

売上高人件費率とは、会社の売上に対する人件費の割合のことを指します。人件費には、社員の単純な給与、賞与の他に、福利厚生費、法定福利費、退職金、役員であれば役員報酬と役員報酬などが含まれます。

売上高人件費率が大きければ、会社の人件費の負担割合が大きいことを示しており、逆に人件費率が小さければ、会社の人件費の負担割合が小さいことを示します。

参考:
業種別売上高人件費率の計算とコントロール方法

今回は、労働分配率の意味と計算式、また労働分配率と売上高人件費率を使った適正な社員給与の見極め方を考えたいと思います。

どちらも人件費を主とした経営状態の適正を見るために重要な指標なので、必ず覚えておきましょう。

労働分配率とは

労働分配率とは、会社の利益(付加価値)に対する人件費の割合のことを指します。

売上高人件費率と同様、一概に労働分配率が小さいことが良いことで、労働分配率が大きいことが悪いことではありません。

重要なことは、業種、企業規模、ビジネスモデル等に合わせた適切な売上高人件費率を把握し、経営指標として比較しながら正しく運用することです。

労働分配率の計算式は以下の通り。

労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100
※付加価値=売上総利益=売り上げ額×利益率

労働分配率(%)=人件費÷粗利益×100

上記どちらかの式で計算するのですが、労働分配率の値は通常40~60%程度だと言われています。この割合が高過ぎる企業は労働効率が悪いということになります。

また、労働分配率の付加価値とは売上総利益のことを指します。そのため、付加価値の算出方法は「売り上げ×利益率」です。

ある商品を10,000円で仕入れ、15,000円で販売した場合、「会社はその商品に5,000円の付加価値を加えた」とみなします。

例えば年間5,000万円を売り上げるA生花店の売上総利益が2,800万円だったとします。

A生花店は社長を含めて常勤社員が3人、パートが2人で人件費は年間1,750万円かかっています。この場合、労働分配率は以下の数値になります。

17,500,000÷28,000,000×100=53%

花屋の業界平均労働分配率が55%前後なので、このA生花店の労働分配率は適性よりも少しだけ高いということです。

参考:
参考になる業種別平均値!売上高人件費率と労働分配率

まずは、計算によって自社の現在の数値を理解することが重要です。事業計画や売上高人件費率と比較しながら、事業に適した労働分配率に持っていく経営を行います。

労働分配率と売上高人件費率の改善方法

先程のA生花店の例で、労働分配率と売上高人件費率を比べてみましょう。

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例えば年間5,000万円を売り上げるA生花店の売上総利益が2,800万円だったとします。A生花店は社長を含めて、常勤社員が3人、パートが2人で人件費は年間1,750万円かかっています。
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売上5,000万円、利益率56%、人件費1,750万円なので、人件費率は35%、労働分配率は53%となります。

花屋の売上高人件費率平均は30%程、労働分配率平均は55%前後であるため、どちらの指標をみても人件費が少し高いことがわかります。

仮に人件費(の中の給与と役員報酬)の振り分けが、社長の役員報酬500万円、常勤社員の給与350万円×3人、パート100万円×2人だとすると一見普通です。ここで考えられることは、以下の通りです。

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・生花の販売額が平均よりも低い
・生花の仕入れが平均よりも高い
・社員の給与が仕事量に比べて高い
・パートの時給が仕事量に比べて高い
・社長の役員報酬が仕事量に比べて高い
・仕事量に対して働く人数が多すぎる
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上記は決算書や現場の状況を照らしあわせてみれば一目瞭然なので、改善ポイントが簡単に見つかります。自社で算出した労働分配率と売上高人件費率を業界平均と比べてみることが大切です。

ちなみに起業した社長が自分の役員報酬を決める場合は、以下の考え方を用いて決めると良いでしょう。

参考:
役員報酬ゼロはあり?起業社長の給与を決める4つの方法

労働分配率と売上高人件費率で社員給与を決める方法まとめ

労働分配率が高すぎる場合は、利益に対して人件費過多になるため販売効率が悪い状況と言えます。

労働分配率が低すぎる場合は、社員の給与水準が利益の割に低いため労働環境が悪い可能性があります。

労働分配率と売上高人件費率を使えば、業種ごとに参考にすべき指標があるため、自社の経営がどこに向かうべきか図ることができます。

以下の売上高人件費率、労働分配率の業種別平均値を参考にして、経営に最適な人件費を目指しましょう。

参考:
参考になる業種別平均値!売上高人件費率と労働分配率

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