社会保険未加入は80万社!会社が被る5つのデメリット

社会保険未加入は80万社!会社が被る5つのデメリット

社会保険未加入企業は80万社!

2014年7月4日の政府発表により、2015年度から社会保険未加入業者約80万社を特定し、厳しく社会保険に加入させる方針を明らかにしました。

方法としては、国税庁の納税情報を年金機構が使用し、社会保険の未加入企業をリストアップして指導していくというものです。

ここで驚いたことが2つ。

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・社会保険未加入企業が80万社もあるということ
・公的機関で情報が共有されていなかったということ
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総務省統計局によると、平成24年2月時点で、全国にある企業数は412万8215企業。約4割強が法人企業と言われているので、法人企業は約170万社あるということになります。

参考:
日本の企業数、倒産件数、赤字会社の割合、上場企業数など

法人と個人事業主を合わせると約400万社あり、そのうち80万社が違法に社会保険に加入していない……。つまり約20%の企業が社会保険に加入していないことになります。

個人事業主においては、5名以上の従業員を雇うことが社会保険の加入義務条件です。ということは、社会保険の加入義務がない方たちが多くを占めるのかもしれません。

加入義務があるのは、労災保険と雇用保険で、健康保険と厚生年金保険は「従業員が5人未満の個人事業」であれば、加入義務はありません。

つまり法人であれば絶対加入、個人事業主でも5人以上雇用していれば絶対加入ということです。

参考:
会社負担は社員給与の15%!社会保険料シミュレーション

そのため、実数はわかりませんが、かなり多くの法人企業が社会保険に加入していないと予想されます。

社会保険の未加入は法律上の罰則があることは当然として、その他にも大きなデメリットを負っていることを認識しなくてはいけません。

そこで今回は、社会保険未加入によって企業が被るデメリットをご紹介したいと思います。

社会保険未加入のデメリット1.最大2年の追徴金

「うちは、まだ社会保険未加入だってバレてないから~。」
「一度年金事務所から通達あったけど、それ以来音沙汰ないし大丈夫かな……。」

と言うのは甘いです。まず、社会保険未加入だということがバレていないケースはほぼありません。

これまでは、あからさまな企業に対しては必ず社会保険加入の旨が通達されていますが、疑わしい程度の企業はスルーされていました(まぁ、これは問題ですが。)

今後は、もし年金事務所から社会保険未加入だと通達があった場合、以下のように最大2年間の追徴金を課せられるかもしれません。

たとえば、月額報酬換算で30万円、3年間社会保険未加入者が3人の場合、おおよそ以下の数字になります。

3人×(厚生年金保険料52,422円+健康保険料29,910円)×24か月=5,927,904円

会社負担はこの内半分なので、5,927,904円÷2=2,963,952円

参考:
社会保険未加入、保険料未納で受ける罰則とは

上記はたった3人が2年間社会保険未加入だった場合ですが、それでも2年間で300万円の追徴金です。経営に対するインパクトは恐ろしい物になります。

社会保険未加入のデメリット2.法的な罰則がある

さらに、社会保険未加入は違法行為にあたるため、法律での罰則がくだされます。

社会保険未加入の場合の罰則は、健康保険法第208条で「6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金」と定められています。

参考:
社会保険未加入、保険料未納で受ける罰則とは

これまで、この法的な罰則はほぼ行われていませんでしたが、政府が明確な指導をすることを明言したため、年金事務所としても強制的に使わざるを得ないでしょう。

社会保険未加入のデメリット3.人材採用が困難

もしあなたの会社が人材採用を行いたい場合、社会保険未加入だとわかったときの人材採用はかなり困難になるでしょう。

求人誌を見ると「社保完備!」と書いてありますが、このような当たり前のことが書いてあるだけで求職者は安心するものです。

逆に書いていないと、「えーっと、社会保険は……?」とやんわり求職者に聞かれることになります。

必要な人材の雇用ができないことは、会社にとって大きなデメリットでしょう。

社会保険未加入のデメリット4.ハローワークで求人できない

社会保険未加入企業は、求職者から社会保険に関する質問をされるだけではなく、そもそもハローワークに求人を出すことができません。

もし社会保険未加入の状態で求人票を出した場合は、その場で、社会保険に加入することを条件として求人票を受け付けるという体制になっています。

求人広告費をあまり多くかけられない中小企業にとって、ハローワークが使えないことは大きなデメリットです。

社会保険未加入のデメリット5.関係者からの損害賠償請求

もし企業が社会保険未加入だった場合、退職した従業員が年金請求する際に厚生年金が支給されない可能性があります。

その場合、本来社会保険に加入させる義務を負うのは企業側になるため、退職した従業員からの損害賠償請求に発展することが考えられます。

また退職ではなく、従業員が死亡した場合、遺族が遺族厚生年金を請求するのですが、同様に支給されない可能性があります。

家族が社長であるあなたを慮って何もアクションを起こさない、ということは考えられないでしょう。

社会保険未加入のデメリットと今後の社会保険制度に関して

義務に対して、厳しくなるも何もあったものではないんですが、本来加入しなければいけない社会保険に80万社が未加入だということは、それだけ対策の余地があるということです。

今後日本の高齢化はさらに進み、年金原資の徴収額も下がっていきます。そのため、社会保険制度はこれまでよりも厳しい管理を必要とします。

一般納付者からすれば、社会保険未加入企業が罰を受けたり、デメリットがあることは当たり前のことだと考えるでしょう。

社長であれば、当然社会保険がある前提で経営を考えなければいけません。

ところで、近年急に年金事務所の対応が厳しくなったという話が、いろいろなところから聞こえてきます。社会保険未加入、社会保険未納に対する罰則、取り締まりの強化です。

社会保険制度をうまく運用するためには、社会保険が義務化されている企業の経営が安定していなければいけません。

ところが、そこを度外視した年金事務所の対応も多いようで、1mmたりとも融通が効かない状況を作っているため、事業継続ができない企業が続出しているというお話。たとえば、

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年金事務所が指定した納期日だけを重視し、社長の納期日が全く聞き入れられない……。
未納保険料と企業の売掛を相殺できないか、勝手に売掛債権先に連絡を入れてしまう……。
大口の取引先に支払状況を勝手に確認する……。
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どこまでが事実かはわかりませんが、これらの噂は聞いたことがあります。ここ2~3年のことです。

さすがにこれはやり過ぎでしょう。年金事務所は、社会保険料を納めてもらうことが目的であるにもかかわらず、罰則を強化することが目的にすり替わっており、これでは事業とは関係がない部外者によって会社の信用を落とすことになります。

もちろん、最初から社会保険料をきっちり納めていれば、何も問題はないわけなのですが。

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