みなし残業を正しく活用する方法は?使い方を誤れば違法性も…

みなし残業を正しく活用する方法は?使い方を誤れば違法性も…

少しずつ増えてきている「みなし残業」というスタイル。求人誌などでも目にする機会が増加してきました。

みなし残業は使い方を間違えると違法になることもありますが、正しく理解して使うと経営者にも従業員にも恩恵をもたらします。今回はみなし残業の基本と注意点について確認していきましょう。

増加しつつある「みなし残業」とは?

みなし残業とは、定められた給料の中に残業代が既に含まれている賃金形態を指します。あらかじめ一定時間の残業代が給料に組み込まれていることから、「固定残業制度」や「定額残業制」と呼ばれることもあります。このような賃金形態は労働基準法でも認められています。

実際にみなし残業ではどのように労働時間を管理するのか、次のグラフを見てみましょう。

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こちらのグラフにある通り、基本の労働時間が8時間であると仮定します。みなし残業が1時間に設定されている場合、1時間分は残業をしても賃金は変わりません。労働時間が8時間で終わっても、9時間で終わっても給料は変わらないのです。みなし残業時間分を超えた時間が、ここでは「残業」として扱われます。

実際には、月ごとにみなし残業の時間を設定していることが多いです。例えば、「給与20万円(残業15時間分を含む)」といった具合で賃金が設定されています。最近では、こうした記載がある求人情報を目にする機会も増えてきました。

みなし残業分に設定した時間を超えた場合は、しっかりとルールに沿って残業代を支払う必要があります。この点は通常の残業代と同じで、雇用者は支払う義務があります。「みなし残業を払っているので、いくら残業しても給与は変わらない」という仕組みではないため、正しい考え方を知っておきましょう。

みなし残業のメリット

みなし残業は、使い方次第で雇用者にも従業員にもメリットがあります。雇用者にとっては、細かく残業代を計算しなくて済むという点で恩恵が大きいです。残業代の計算は意外と手間になりますし、この作業に関わるエネルギーを何か他のことに使った方が良いと考える方には、みなし残業が向いているかもしれません。月あたりある程度の残業が想定されるのであれば、最初から賃金体系に組み込んでおくというのは合理的な方法です。

ただし、みなし残業を超えた分の残業代は、次のルールに従って支払いをしなければなりません。ここが守れないとルール違反になってしまうため注意が必要です。

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このように、法定時間外労働などは割増した賃金を支払わなければならないなど、いくつかのルールがあります。こちらも経営者としては必ず知っておきたい知識ですね。

また、労働者にとっても、みなし残業制度がメリットとなるケースがあります。それは、仮に残業しなくても加算分の賃金をもらうことができるからです。残業の有無に左右されず、一定の給与を得ることができる仕組みは歓迎されるでしょう。特に基本給がそれほど多くない職種では、一定の残業代が加算されることはありがたく感じられることが多いです。

誤った使い方をすると違法になる

みなし残業は法的に認められている仕組みですが、「労働時間の算定が困難」といった要件を満たす必要があります。雇用者の一方的な都合や考えによって、みなし労働を採用することは避けたいところです。近年は「ブラック企業」という言葉もすっかり定着しました。あくまでも従業員の目線で待遇を検討していかなければ、ブラック企業のレッテルを貼られることになりかねません。

また、みなし残業分を加算することで、給与を多く見せかけるだけでは従業員が離れてしまいます。初見ではいい条件のように思えても、実際に時間当たりの給料を計算してみると、最低賃金を下回っていたということがあってはなりません。そうなるとせっかくのみなし残業も「違法」になるため注意が必要です。

また、正社員で働いているのに時給に換算したら、パート・アルバイトと変わらないなどという場合も、従業員の意欲が失われる理由になります。最低賃金を上回っていれば違法ではありませんが、従業員の不平不満につながる恐れはあるでしょう。

みなし残業は必ずしも違法になるわけではありませんが、あくまでも使い方次第というところです。従業員の賃金形態として活用できる可能性は十分にありますし、実際にうまく利点を生かしている経営者もいます。既にみなし残業従業員の立場になって、不公平な条件になっていないか意識しておきましょう。

まとめ

みなし残業は、あくまでも労働時間の管理をしやすくするための仕組みです。従業員にとっては、残業の多い少ないに関わらず一定の給与を受け取れるという恩恵があります。

みなし残業という形で残業代を払っているからといって、いくらでも従業員を酷使していいわけではありません。従業員の目線になって、双方にとってメリットとなるような体制づくりを意識しましょう。

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