社会保険未加入、保険料未納で受ける罰則や追徴金

社会保険未加入、保険料未納で受ける罰則や追徴金

社会保険には加入義務がある

社会保険の詳細に関しては、以前も何度かお話しています。

社会保険とは、「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4種類を言います。

社会保険(しゃかいほけん)とは、社会保障の分野のひとつで、国民が生活する上での疾病、高齢化、失業、労働災害、介護などの事故(リスク)に備えて、事前に強制加入の保険にはいることによって、事故(リスク)が起こった時に現金又は現物給付により生活を保障する相互扶助の仕組みである。

参考:
社会保険 – Wikipedia

参考:
会社負担は社員給与の15%!社会保険料シミュレーション

仕組みについてもう少し詳しく説明をしておきましょう。社会保険料を構成する割合が多い「厚生年金保険料」と「健康保険料」は、以下の「標準報酬月額表」を用いて計算されます。

平生26年度保険料月額一覧

通常、給料は1年間固定です。ベースアップは前期の成績や会社への貢献度を加味した上で、期首に決定されることが多いでしょう。

たとえば、期首に決まった月収が30万円だったとしましょう。期首が4月の会社もあれば、12月の会社もありますが、その時期には関係なく毎年1回、4月・5月・6月の月収の平均額が標準報酬月額になります。

標準報酬月額に対応した厚生年金保険料、健康保険料が社会保険料のベースです。保険料は会社と従業員とで折半し、会社が給与から天引きした上でまとめて支払いを行います。

厚生年金保険料と健康保険料を合算した金額が以下です。

52,422円+29,910円÷2=41,166円

これに、雇用保険料の一部、労災保険料の一部を加えたものが従業員が負担する社会保険料になります。

さて、そんな社会保険ですが、法人であれば加入義務が生じます。近年、社会保険加入の指導が強化されつつあり、労働者にとってようやく当たり前の労働環境が整えられようとしてます。

加入義務があるのは、労災保険と雇用保険で、健康保険と厚生年金保険は「従業員が5人未満の個人事業」であれば、加入義務はありません。

つまり法人であれば絶対加入、個人事業主でも5人以上雇用していれば絶対加入ということです。

参考:
会社負担は社員給与の15%!社会保険料シミュレーション

社会保険加入が義務付けられている企業が全国に何社あるのかはわかりませんが、今現在、社会保険未加入企業は80万社あると言われています。

法人と個人事業主を合わせると約400万社あり、そのうち80万社が違法に社会保険に加入していない……。つまり約20%の企業が社会保険に加入していないことになります。

参考:
社会保険未加入は80万社!会社が被る5つのデメリット

今後、これら社会保険未加入企業に対して、様々な加入指導がありますが、一番わかり易いものは社会保険未加入に対する罰則と社会保険料未納による追徴金でしょう。

というわけで今回は、(一部の人はとっても気になる)社会保険未加入、保険料未納の場合に、会社が受ける罰則についてのお話をしたいと思います。

社会保険未加入の罰則は?

社会保険に加入しなければいけない会社が未加入の場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?

社会保険未加入の場合の罰則として、社会保険料の追徴と罰金があります。

社会保険未加入の追徴金

もし、年金事務所の調査により未加入が発覚した会社には、該当者全員の社会保険料を2年間に遡って追徴されます。

たとえば、月額報酬換算で30万円、3年間社会保険未加入者が3人の場合、おおよそ以下の数字になります。

3人×(厚生年金保険料52,422円+健康保険料29,910円)×24か月=5,927,904円

会社負担はこの内の約半分なので、

5,927,904円÷2=2,963,952円!

もちろん、追徴であろうが、まじめにコツコツ払っていようが金額は変わりません。

しかし、いきなりこの額を追徴されることの大きさは、社長であればよく理解できるはずです。

さらに、従業員がすでに会社を辞めており、何らかの理由で社会保険事務所と連絡がつかない場合は、会社が追徴金を肩代わり負担しなければいけないこともあります。

社会保険未加入の罰則

社会保険未加入の場合の罰則は、健康保険法第208条で「6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金」と定められています。

社会保険料未納の罰則は?

社会保険に加入しているにもかかわらず、社会保険料未納の際の罰則には延滞金があります。

ちなみに、社会保険料の徴収・納付は、一般的に翌月徴収・翌月納付となっています。

翌月徴収・翌月納付とは、例えば4月分の保険料の納付は5月末日(翌月納付)なので、5月に支給される給与から徴収するというルールです。

給料の支払い方は会社によってさまざまですが、社会保険料は前月分を次月の支給された給料から天引きされるということです。

つまり延滞金は、5月末に納付しなかった4月分に対して督促状が届きます。

そして、督促状の指定期日までに社会保険料を完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じて延滞金が発生します。

厚生年金保険料等を滞納し、督促状の指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、保険料額(保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切捨て)に一定の割合を乗じて計算した延滞金を徴収します。

参考:
延滞金について|日本年金機構

また、同ページには、以下のように延滞金の計算方法がありますが、少し見にくいのでテキスト化しておきます。

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納期限の翌日から最初の3か月間

納付すべき社会保険料額※1×延滞金の割合※2×延滞日数※3

※1.保険料額1,000円未満の端数は切り捨て
※2.年率7.3%と特例基準割合+1%の低い方を適用
※3.納期限の翌日から90日経過する日までの日数

納期限を3か月超えた期間

納付すべき社会保険料額※1×延滞金の割合※2×延滞日数※3

※1.保険料額1,000円未満の端数は切り捨て
※2.年率14.6%と特例基準割合+7.3%の低い方を適用
※3.納期限の翌日から90日経過した翌日からの日数

これを見てお分かりの通り、納期限を3か月を過ぎると重い延滞金を支払わなければいけません。

社会保険未加入、社会保険料未納で受ける罰則・追徴金まとめ

もちろん、いろいろやりくりをすれば、社会保険に加入しないようにする抜け道がないわけではありません。

ただ、社会保険料の支払いは損得のお話ではありませんし、払わないことが節約の一環ではありません。

今回ご紹介した公的な罰則の他にも、社会保険に加入しないことや未納による弊害が必ず出てきます。

参考:
社会保険未加入は80万社!会社が被る5つのデメリット

今後、社会保険の義務はより強化され、罰則も厳しくなっていくことは明らかです。

社会保険への取り組みに対して、裏でこちょこちょ策を巡らせるよりは、社会保険料を大前提と考えた会社を経営をしながら、売り上げを増やす仕組みや人を必要としないビジネススキームを考えていく方が健全です。

もしも、もしも、今社会保険に加入していない社長がこの記事を見ているのなら……、今すぐその考え方を切り替えて、社会保険と真摯に向き合いましょう。

見つかってからでは遅いので。

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