簡単な事業計画書から事業資金融資の必要性を考える方法

簡単な事業計画書から事業資金融資の必要性を考える方法

事業資金融資を受けたい!

会社設立で大切なことは、事業計画書と資金計画書です。サラリーマン時代に事業計画書を作ったことはあっても、融資計画書を作ったことがある人は少ないでしょう。

初めての会社設立の場合、店舗経営、施設経営、製造業などの設備投資が必要な事業形態とは違い、営業系、IT系、人材ビジネスなど設備投資がいらない業種で起業をする方は、起業当初の融資に抵抗がある方が多いようです。

もしあなたが起業当初の融資に抵抗を持っているとしたら、その考え方は変えた方が良いかもしれません。

仮に融資を受けずに事業を進められるとしても、融資を受けることで事業のスピードを早めたり、新たな発想を生んでくれることがあります。

融資の目的1.次の事業展開を生む固定資産を買うための融資
融資の目的2.会社の成長スピードを補う時間を買うための融資
融資の目的3.仕入などにスケールメリットを設けるための融資
融資の目的4.将来に備えて返済実績を作るための融資
融資の目的5.乗り切りたい最後の切り札となる運転資金融資

参考:
その融資本当に必要?資金調達が担う5つの目的とは

融資の目的をしっかりと押さえて有効活用するために、上記記事を参考にしてください。

融資の種類としては、日本政策金融公庫の新創業融資も含めて、起業当初の社長を効率良く助けてくれる融資制度がたくさんあります。また、金融機関によって融資の特徴も違います。

参考:
起業時でも無担保で最大3000万円!新創業融資制度とは
銀行、保証協会、日本政策金融公庫の融資の違い

今回は、あなたの会社に融資が必要かどうかを起業当初の事業計画から紐解く簡単な考え方をご紹介したいと思います。

ある営業会社の事業計画

例えば簡単ですが、このような事業計画があるとします。(簡単すぎる、というのはちょっと置いといて。)

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1月売上:200万円 経費:100万円 粗利100万円
2月売上:210万円 経費:105万円 粗利105万円
3月売上:220万円 経費:110万円 粗利110万円
4月売上:230万円 経費:115万円 粗利115万円
5月売上:240万円 経費:120万円 粗利120万円
6月売上:400万円 経費:200万円 粗利200万円
7月売上:420万円 経費:210万円 粗利210万円
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質問- 現在、人は何人いますか?
回答- 私と営業マン1人、事務が1人です。

質問- 5月と6月に売上が伸びているのはなぜですか?
回答- これは、営業マンを3人雇う予定だからです。

質問- 販売する商品の価格帯はいくら位ですか?
回答- 20~25万円で商品を販売します。将来的にアップセルモデルを作ります。

質問- 粗利が大きい商売ですが、どのような構成になっていますか?
回答- まず経費は次月の仕入れと交通費と事務所代です。粗利は社員の給料、私の報酬です。

質問- 人を雇うことで売上が上がるのですか?全体の経費割合は増えないんですか?
回答- 仕入れは営業成果により次月に販売分だけ仕入れるので、当面経費割合は増えません。

質問- どれ位の市場規模がありますか?
回答- 私たちが関わる市場は全体で5,000億円ほどです。

質問- どのように売り上げを拡大していきますか?
回答- 営業手法にノウハウがあります。そのため他社に先駆けて顧客獲得できます。

質問- その営業ノウハウを裏付ける要素はありますか?
回答- 2か月ほど実験的に飛び込みで声掛けをしましたが、300件中30件以上の見込み客を確保出来ました。私以外でもこの半分は見込顧客を作れると思います。見込みからの成約率は30%から40%の間です。

さて、まだまだ質問は続けたいのですが上記でわかってくることがあります。

この場合、営業ノウハウが他社にないもので、その営業ノウハウを使うことにより十分な営業成果を出せるという前提があるならば、100%融資を受けたほうが良いパターンです。

事業モデルを分解して見てみよう

融資を受ける場合に重要視される1つが”事業の確実性”です。もちろん100%確実な事業計画は存在しませんが、社長がテスト営業を実行し、その上で自信を持っている営業ノウハウならば、ある程度の方程式が成り立っていると考えられます。

上記のケースの場合、仕入れ方法と料金設定が決まっており、経費割合が増えるものではないので、シミュレートにおける変数は営業マンの人数と成果の掛け合わせがメインです。

話の流れから、1人当たりのアッパーが決まっている営業手法だということはお分かりだと思います。そのため、5月に人を入れて、6月の売上を伸ばしたいということなのでしょう。

ここでキーとなるいくつかのポイントを見てみます。

ポイント1.マンパワーで事業がスケールする

この商売の特性上、マンパワーで事業がスケールすることがわかります。飛び込みでの顧客引き合いが大きく、見込顧客を作るまでの割合が10%以上(300件中30件以上)と高い数値であることから、顧客需要が高い商品であると予測できます。

ポイント2.勝ちパターンを持っている

2か月で300件の飛び込みを行っていることから、1件あたりに時間をかけず数をこなす営業ができる商材を扱っていることがわかります。

さらに、仕入れは営業後に行えることも非常に大きく、在庫リスクがないばかりでなく粗利率も50%と高めであるため、採算ベースに乗せることが難しくないとわかります。

ポイント3.経費割合は大きく変わらない

恐らく設備投資が必要なビジネスモデルではないため、1商品の売上と利益が明確です。この場合、将来的な市場規模とライバル動向によりますが、マンパワーが売上と利益に貢献するビジネスモデルだということがわかります。

ポイント4.上位モデルのアップセル商材

“アップセルの上位モデル”が視野に入っているということは、ある程度、顧客・見込顧客を蓄積することが可能なモデルだと想像できます。

顧客の蓄積、つまりリピーターは市場の変化に耐性を持つためには重要な要素です。

事業計画的には融資を受けた方が良い

ざっと事業モデルを分解してみましたが、この会社に必要なことは、じっくりと見極めながら事業モデルの下地を作っていくことではなく、行動力がある営業マンによる面取り作業だということがわかって頂けるはずです。

営業でキャッシュを積み上げることにより、アップセル商材の開発とテスト販売、販売体制の分業化、別軸の販売プロモーションなどの検討が次のステップとして必要になると予想できます。

この会社のケースでは、しっかりとしたビジネスの柱があるはずなので「融資を受けること=営業でキャッシュを作るショートカット」ということになります。

これは、以下の参考で言うところの「次の展開を買う」、「成長スピードを補う時間を買う」といった融資目的になります。

参考:
もう一度融資の意味を考えよう!融資には5つの目的がある

事業資金融資を受けるための事業計画書の見方

事業資金融資を受けるべきか迷ったり、抵抗がある社長の考え方は3つあります。

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1.ビジネスモデルが確立できていない、柱事業がない
2.お金を借りて返せるかどうかのリスク思考が強い
3.自分たちの力だけでやっていきたい
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まず1のビジネスモデルをしっかり確立できていないのであれば、融資の必要はないでしょう。融資とはあくまでも前に進むための推進力なので、柱事業がなければまずそれを作らなければいけません。

2の場合は考え方を変えたほうが良いでしょう。確実に返すことができるような事業計画を作りさえすれば、融資は大きな推進力になります。

3は志は良いとは思いますが、「融資=お金を借りる」ことが悪いことだと思ってしまっています。何を成し遂げたいのか、その目的さえ明確であれば、仮に1億円借りても5年で返してしまえば6年目には無借金企業です。

融資だけに限らず、資金調達の情報を多く持つことは事業の選択肢を多く持つことと同じです。事業の選択肢を多く持つことは、優れた社長の資質の1つだと思います。

資金調達方法1.融資|銀行や信用金庫から
資金調達方法2.融資|ノンバンクなどのビジネスローンで
資金調達方法3.融資|国民政策金融公庫から
資金調達方法4.融資|信用保証協会を通じた制度融資
資金調達方法5.融資|友人や家族から借り入れ
資金調達方法6.投資|個人投資家(エンジェル)から
資金調達方法7.投資|ベンチャーキャピタルからの出資
資金調達方法8.投資|クラウドファンディングを通じた個人から
資金調達方法9.社債|少人数私募債を発行
資金調達方法10.助成金や補助金

参考:
社長必読!今から考えておく10の資金調達方法

もしあなたが融資を受けようか迷っているならば、まずは事業計画書を分解して意味がある融資が受けられるのかを考えてみましょう。

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