銀行が決算書を格付けする6つの要素と6つの債務者区分

銀行が決算書を格付けする6つの要素と6つの債務者区分

決算書は外部機関に格付けされる重要な書類

どのような企業でも1年に1回は決算を行います。ところが本来事業とは、1年区切りで行われるものではありません。

1日単位の売り上げを重要視する店舗商売から、半年以上、1年以上の期間でプロジェクトが行われる建設業、1つのプロジェクトに何十年という時間を費やす製薬業など事業の時間の単位はさまざまです。

ただ、会社の業績や進行具合を計測するために決められた期間を区切って、何らかの判断をくださなければいけないことも理解できます。

それが1年毎の決算です。「社長が見るブログ」を発見したあなたは、決算書の大切さを十分知っている方だと思います。

決算書は社長が自分の足下を把握し、次の経営の一手を打ったり、事業の軌道修正をするための重要な役割を担います。

さらに決算書には、外部機関によって格付けを受けるための重要な役割も持っています。

格付けとは、たとえば銀行などの金融機関が行う評価のことで、格付けの内容が融資に影響を与えます。

というわけで今回は、金融機関が見ている決算書の6つの要素と、金融機関がどのように格付けをしているのかをご紹介したいと思います。

銀行による決算書の要素とは

銀行による決算書の格付けとは、銀行が当該企業の決算書を見て、いくらの融資が可能かという銀行独自の評価をすることと考えれば良いでしょう。

銀行によって格付け方法や表現の仕方は変わりますが、概ね以下の要素を重視して決算書を見ています。

決算書の格付け要素1.収益性

収益性の要素は、会社の本業における経営活動で継続的な利益が出ているかを見ます。

まず単純に黒字かどうか、その後に黒字の中身が本業務による利益であるか、そして継続性のある利益であるかなどを判断します。

決算書の格付け要素2.生産性

生産性の要素は、経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」がどれだけ投資されていて、投資に対してどれだけ生産効率が良いかを見ます。

経営資源は、投下資本によって得られる資本(設備費など)とそれを動かす労働力(人件費)に分けられます。つまり、生産性は資本生産性と労働生産性で見るということです。

いかにローコストでスピーディーに、仕入れ、生産、販売が行われているかが重要です。

決算書の格付け要素3.安定性

安定性の要素は、安定感があり、バランスを考えた経営が行われているかを見ます。

たとえば、売り上げとそれに対するコストと利益のバランスが良く、将来に渡って計画的にそれが続くと予想できることが重要です。

またその上で、自社を取り巻く経営環境の変化に耐えられるリスクヘッジ(内部留保、商品開発、顧客開拓など)が計画されているかを判断します。

決算書の格付け要素4.成長性

成長性の要素は、業績が順調に伸びているかを見ます。

銀行が決算書をチェックする場合、多くが過去3期分+今期の月次決算を確認します。つまり、過去から現在において計画的に成長しているか判断します。

将来の成長に向けて、どのような要素が改善されるべきかという把握も重要なチェックポイントです。

決算書の格付け要素5.資金性

資金性の要素は、キャッシュフローが効率的に回されているかどうかを見ます。

投資した資本の回収状況や現金化可能な資産のバランスによって、資金が安全な状態であるかが重要です。

もちろん、キャッシュは多くあるほど良いのですが、経営効率を高めるための投資を行ったうえで、ある程度のキャッシュを保持することが望ましいでしょう。

決算書の格付け要素6.健全性

健全性の要素とは、投資以外の会社の財政状態や支払い能力を見ます。

たとえ本業の売上と利益があったとしても、社長に対する役員貸付金が多ければ健全と判断されません。

また、高金利な金融機関からの貸金、ひと目で素性がわからない個人からの貸金があれば健全とは判断されないかもしれません。

正しい金融機関から、計画的な資金調達が行われ、正しく使われているかを判断します。役員貸付金などを解消して、健全なキャッシュフローを作るようにしましょう。

ちなみに役員貸付金を解消する方法は以下をご参考に。

参考:
融資審査に影響する役員貸付金5つの解消方法

銀行における債務者区分

上記の要素から、銀行はその会社に対して融資が可能かどうかの一次評価をします。

よく、「銀行は晴れたときに傘を貸して、雨が降ると傘を貸さない。」と揶揄されるため、社長の自己判断よりも自社の評価は低くなると考えておきましょう。

銀行の債務者区分1.正常先

正常先とは、銀行の格付けによって、業績が良好で財務内容に問題がないとされた会社のことです。

銀行の債務者区分2.要注意先

要注意先とは、銀行の格付けによって、業績が低調、もしくは不安定とされた会社のことです。

銀行の債務者区分3.要管理先

要管理先とは、銀行の格付けによって、要注意先の中で3か月以上の元本、または利息の延滞をしている会社のことです。

銀行の債務者区分4.破綻懸念先

破綻懸念先とは、銀行の格付けによって、経営破綻状態ではないが、経営難に陥っており、借入の完済が難しい、経営改善計画がない、またはその進行状況が芳しくないと判断された会社のことです。

ちなみに破綻とは以下の意味のことです。

参考:
倒産とはどんな状態?清算と再生、私的・法的整理の違い

銀行の債務者区分5.実質破綻先

実質破綻先とは、法的には経営破綻してはいないが、深刻な経営難に陥っており、再建が難しいと判断された会社のことです。

債務超過や、元本または利息の長期延滞が続いていることが考えられます。

銀行の債務者区分6.破綻先

破綻先とは、民事再生、破産などの法的な経営破綻に陥っている会社のことです。破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止などの処分を受けていることが考えられます。

帝国データバンクによる格付け

決算書による格付けは、銀行などの金融機関だけではありません。以前にもご紹介した企業信用調査会社も決算書を格付けの要素としています。

日本の企業信用調査は主に帝国データバンクと東京商工リサーチで行われ、大手との取り引きや大口の取り引きを行う際に、信用枠を判断する目的や信用性を判断する目的で調査が行われます。

評点要素は大きくわけて、業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、代表者、企業活力の7つ。

評点要素は、帝国データバンクが持つ140万社以上の企業情報分析から、業種毎の評価基準を設定して行われます。同じ評点の企業でも内訳によって、全体評価は代わりますので、評点が絶対値だとは思わない方が良さそうです。

参考:
企業信用調査とは?帝国データバンク評点に目安はあるか

企業信用調査会社の格付は金融機関とは異なります。また、融資判断とは違い、取り引き判断に使われるため、注意しなければいけない点も異なります。

大手との取り引きを控えた会社や将来的に大口取引を考えている会社は、今のうちから準備しておいた方が良いでしょう。

銀行が決算書を格付けする要素まとめ

物事には必ず当事者目線と他人目線という2つの目線があります。それは決算書も同じ。

いくら社長であるあなたが満足する決算書を作っているからといって、金融機関や信用調査会社が評価をしてくれるとは限りません。

融資を受ける際は金融機関に、信用を高めるためには取引先や信用調査会社に対して、評価されるものさしも持っておく必要があります。

この辺りの話は、税理士と密に話し合わなければいけないのですが、実はここで税理士の実力が大きく変わってくるのです。

そのため、中小企業は特に、信頼のおける実力がある税理士を選ばなければいけません。

税理士の選び方は以下をご参考に。

参考:
会社の成長に繋がる税理士の選び方12のポイント
顧問税理士の業務内容は?確定申告や訪問費用の目安は?

公開をしているしてないにかかわらず、決算書は必ず外部の誰が見ても一定の評価ができる内容を目指してください。決算書は見られるシチュエーションがありますし、場合によっては公開しなければいけないこともあります。

参考:
他社の決算書を見たい!取得する7つの方法
決算書で経営状態を知りたい11の立場とその目的

経営カテゴリの最新記事