法人税+法人住民税+法人事業税の簡単な考え方

法人税+法人住民税+法人事業税の簡単な考え方

法人税の計算のもとになる法人税率とは?

ニュースを見ていると、日本の法人税は他国に比べて高いとか安いとか、日本の法人税は38%だとか35%だとか、「言っていることがいつも違っていて、よくわらかない!」という方は多いはずです。

日本の法人税は、資本金額と課税所得金額によって納税額が以下の様に変わります。

資本金1億円以上の場合は、課税所得金額の23.9%が法人税率になります。資本金1億円未満の場合は、課税所得金額によって以下のように分かれています。

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・課税所得金額が800万円未満の場合、法人税率は15.0%
・課税所得金額が800万円以上の場合、法人税率は23.9%
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※2015年8月現在

参考:
今さら聞けない法人税の基礎と法人税納付額ランキング

あれ?何だか少ない……。

それもそのはず、ニュースで聞く法人税とは法人税単体のことではなく、「法人税+法人事業税+法人住民税(法人税割)」のことだからです。

「法人税+法人事業税+法人住民税(法人税割)」のことを法定実効税率と呼びます。

法定実効税率(ほうていじっこうぜいりつ、英:normal effective statutory tax rate)とは、課税所得に対する法人税、住民税、事業税の表面税率に基づく所定の算定式による総合的な税率をさす。税効果会計における繰延税金資産、繰延税金負債は、一時差異に法定実効税率を乗じて算定される。

参考:
法定実効税率 – Wikipedia

法人税の考え方は本当にややこしいのです。

各種法人税の税率

法人が支払わなければいけない法人税、法人事業税、法人住民税は税引前利益から差し引かれて、最終的に純利益が残ります。

純利益(最終利益)とは以下の式で表される利益のことで、税引前利益に対して、法人税・住民税・事業税などを支払って残った一番最後の利益のことを言います。

純利益=税引前利益-法人税・住民税及び事業税+法人税等調整額

参考:
損益計算書の見方がわかる粗利・営業利益・経常利益…5つの利益

法人が支払う税金にはいくつか特徴がありますが全てを覚える必要はありません。

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・法人所得に乗算して支払う税金がある
・法人税に乗算して支払う税金がある
・法人所得額によって割合が変わる税金がある
・資本金額・従業員数によって割合が変わる税金がある
・赤字でも支払わなければいけない税金がある
・法人の種類によって割合が変わる税金がある
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このようなルールが複雑に絡み合って法人が支払う税金が算定されるのですが、目安を設けると以下の表のようになります。

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上記表は普通法人で、法人所得が存在する場合に支払う税金の割合です。

さらにもう1つ。法人所得がなくても必ず支払わなければいけない「法人住民税(均等割)」という税金があります。

では、それぞれの税金の税率や支払額を見ていきます。本来ルールはかなり細かく分かれていますが、多くの方に当てはまるように絞ってお話していきます。

※全て2016年4月現在の税率

法人税の税率

法人税は、前述した通り資本金額と課税所得金額によって納税額が変わります。

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資本金1億円以上の場合
・課税所得×23.9%

資本金1億円未満の場合
・課税所得が800万円未満:課税所得×15.0%
・課税所得が800万円以上:課税所得×23.9%
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法人税単体は非常に簡単です。資本金が1億円未満の中小企業は課税所得金額によって、税率が15%の部分と23.9%の部分にわかれます。もちろん赤字の場合は法人税はゼロです。

例えば、資本金2,000万円、課税所得が1,000万円の法人の場合、法人税と地方法人税は以下のように考えます。

法人税=(800万円×15%)+(200万円×23.9%)=120万円+47.8万円=167.8万円

ちなみに法人税率は政府方針により減少傾向にあります。直近の法人税率推移を見るとよくわかります。

法人税率の推移  財務省

参考:
法人税率の推移 : 財務省

地方法人税の税率

地方法人税は法人税に4.4%を乗算した数値を税金として納めるというものです。

先ほどの資本金2,000万円、課税所得が1,000万円の法人の場合、地方法人税は以下のように考えます。

法人税=167.8万円
地方法人税=167.8万円×4.4%=7.3832万円

法人事業税の税率

法人事業税は、課税所得金額によって3段階に税率が分かれています。

東京都23区の場合
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・年400万円以下の所得:課税所得×3.4%
・年400万円~800万円の所得:課税所得×5.1%
・年800万円超の所得:課税所得×6.7%
—–

愛知県の場合
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・年400万円以下の所得:課税所得×3.55%
・年400万円~800万円の所得:課税所得×5.319%
・年800万円超の所得:課税所得×6.988%
—–

地方自治体によって独自のルールや計算式を設けていることがあるため、上記はあくまでも目安です。基準は「標準税率」として東京都23区と同じ税率が適用されます。

また、資本金1億円以上の企業は「外形標準課税対象法人」になります。

地方法人税の税率

法人事業税における外形標準課税対象法人には、「地方法人特別税」が課されます。

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・年400万円以下の所得:課税所得×1.46%
・年400万円~800万円の所得:課税所得×2.20%
・年800万円超の所得:課税所得×2.89%
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法人住民税の税率

法人住民税は「道府県民税」と「市町村民税」を合わせた税金のことです。ただし、東京23区内のみに事業所がある法人は「道府県民税」と「市町村民税」と合わせて「都民税」と呼びます。

例えば東京都23区内にのみ事業所がある場合は、
法人住民税=都民税法人税割+都民税均等割

愛知県名古屋市のみに事業所がある場合は、
法人住民税=愛知県民税(法人税割+均等割)+名古屋市民税(法人税割+均等割)

考え方は上記の様になり、事業所が違う県・市に増えると所属する従業員数で割ることで、各地方自治体に納める法人住民税額が決まります。

東京都23区内の場合
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都民税(法人税割)
・法人税×12.9%
※資本金1億円超、法人税額2,000万円超の場合は法人税×16.3%
+
都民税(均等割)
・資本金1000万円未満:70,000円(140,000円)
・資本金1000万円以上:180,000円(200,000円)
・資本金1億円超:290,000円(530,000円)
・資本金10億円超:950,000円(2,290,000円)
・資本金50億円超:1,21,000円(3,800,000円)
※従業員50人未満、()内は50人超
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東京都は23区を特別区と考えます。そのため、23区内に単独の事業所があるか、23区内に複数の事業所があるか、23区外に事業所があるか、23区内と23区外に事業所があるかなどを組み合わせて、法人住民税の算出を行います。

愛知県名古屋市の場合
—–
県民税(法人税割)
・法人税×3.2%
+
県民税(均等割)
・資本金1000万円未満:21,000円
・資本金1000万円以上:52,500円
・資本金1億円超:136,500円
・資本金10億円超:567,000円
・資本金50億円超:840,000円
+
市民税(法人税割)
・法人税×9.7%
+
市民税(均等割)
・資本金1000万円未満:47,500円(114,000円)
・資本金1000万円以上:123,500円(142,500円)
・資本金1億円超:152,000円(380,000円)
・資本金10億円超:389,500円(1,662,500円)
・資本金50億円超:389,500円(2,850,000円)
※従業員50人未満、()内は50人超
—–

各種税率は従業員数、資本金額、課税所得金額によって変わるため、上記はあくまでも目安です。法人住民税は複雑なので、事業所がある都道府県、および市区町村の自治体ホームページで確認してください。

参考:
東京都主税局<税目別メニュー><法人事業税・法人都民税>
法人県民税・事業税・地方法人特別税 – 愛知県
名古屋市:法人市民税(あらまし・税率)(暮らしの情報)

法人税+法人住民税+法人事業税の考え方まとめ

法人税+法人住民税+法人事業税の考え方を一発で理解することはなかなか難しいことです。

さて、冒頭でお話したニュースで流れる日本の法人税率(≠法定実効税率)が違う理由は、このように複雑な法人税のルールと前提条件によって算定数値が変わるためです。

ちなみに各国の法定実効税率の目安は以下の通りです。

法定実効税率

参考:
法定実効税率 – Wikipedia

表内にある付加価値税とは消費税のことです。

日本の法定実効税率は、世界の中でも高い方だと言われています。そのため、今後は消費税を上げる代わりに法定実効税率を20%台まで引き下げる方向性が決まっています。

しかし、この法定実効税率の数値は大きな落とし穴というか、ごまかしというか……「本当に日本の法人税は高いの???」という疑問が入る余地がたっぷりありますが、この話はまた別途したいと思います。

社長は、法人税、法人住民税、法人事業税の全てを知っておく必要はありませんが、自社の目安は押さえておいた方が良いです。

顧問税理士はあなたの会社の規模や課税所得目安を理解しているので、「うちの法人税、法人事業税、法人住民税の目安になる条件の一覧を欲しい。」と言えば、一覧表を用意してもらえるはずです。

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