銀行、保証協会、日本政策金融公庫は融資に重要な機関
あなたは会社の経営に、ちゃんと融資を活用してますか?
「俺は融資なんていらないよ!」という強者の社長を除いて、融資は大切!融資は会社の栄養源です。
個人的には、然るべきタイミングで融資を受けずに会社を成長させようとするのは、余程のお金持ちか、ドM行為だと考えています。
冗談はさておき、融資を受けない・受けたくないと考える社長は次の3つに該当するかもしれません。
事業資金融資を受けるべきか迷ったり、抵抗がある経営者の考え方は3つあります。
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1.ビジネスモデルが確立できていない。柱事業がない。
2.お金を借りて返せるかどうかのリスク思考が強い。
3.自分たちの力だけでやっていきたい。
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この3つの考え方をどのように受け止めるかはリンク先に書いてあるので、参考にしてください。
ちなみに融資とは、単純に「必要としている人に資金を融通すること」であり、個人・法人は問いません。また、消費者金融などのノンバンクでお金を借りても融資といいます。
さて、私たち法人が融資と聞くと、銀行、保証協会、日本政策金融公庫が思い浮かぶはずです。資金繰りの際には、なるべくこの3つを使った融資を試みます。
では、銀行、保証協会、日本政策金融公庫の融資にはどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、理解しやすいように、起業後に融資を考慮する順番である「日本政策金融公庫→保証協会→銀行」の順に、それぞれの融資の特徴を説明していきたいと思います。
融資の特徴1.日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、日本国内において起業や独立をサポートする融資制度を取り扱うために、財務省所管の特殊法人として2008年10月1日に設立されました。
日本政策金融公庫は、起業した会社が一番最初に活用する可能性がある公的な金融機関です。
日本政策金融公庫は、政府系金融機関として、民間の金融機関を補完する役割を果たしています。日本では起業を推進しており、その助けになる開業資金を融資する機関として、最初にお世話になる可能性があります。
日本政策金融公庫の業務は大きくは4つに分かれます。
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1.国民生活事業
2.農林水産事業
3.中小企業事業
4.危機対応円滑化業務
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この中で一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業です。
国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先は93万企業もあります。平均融資残高は679万円と小口の融資で、そのうち約9割が社員数9人以下、半数が個人企業です。
日本政策金融公庫で中小企業がよく利用する4つの融資制度は以下の通りです。
融資制度1.新創業融資制度
新創業融資制度は、以前お話した通りです。無担保無保証で最大3,000万円までの融資ですが、審査自体は簡単ではなく、他の融資制度の併用が必要です。
数ある創業融資の中でも、新創業融資制度の特徴は「無担保、無保証、連帯保証人不要」という驚きの条件で、対象は法人だけでなく個人事業主も含まれます。
融資制度2.新規開業資金(新企業育成貸付)
新規開業資金は、事業開始後約7年以内の中小企業に対する融資です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする資金を用途としています。
その他の条件は以下をご参照ください。
参考:
新規開業資金|日本政策金融公庫
融資制度3.普通貸付
普通貸付は、特別な条件はほとんどなく、様々な業種の中小企業が活用できる融資制度です。融資限度額は4,800万円で、用途によって利率が変わります。
その他の条件は以下をご参照ください。
参考:
普通貸付|日本政策金融公庫
融資制度4.マル経融資(経営改善貸付)
マル経融資は、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の方が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度です。
融資限度額は2,000万円で、商工会議所会頭、商工会会長等の推薦が必要になります。
その他の条件は以下をご参照ください。
参考:
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)|日本政策金融公庫
融資の特徴2.信用保証協会
信用保証協会は、融資機関ではなく保証機関です。通常、信用保証協会が登場するシーンは、会社が銀行から融資を受ける際に信用保証協会が保証人になる場合です。
銀行は、ある程度の取引実績がなければ直接融資する事はありません。まずは、保証協会を後ろ盾にした制度融資を行います。
保証協会が保証人になると、会社が返済できなくなった時は、保証協会が銀行に残債を返済し、債権者が保証協会に変わります。
中小企業は大企業と比較するとどうしても信用力が落ちてしまいます。融資を受けようとすれば信用力を補うために「保証人」が必要になりますが、なかなか保証人のハンコは押してもらえません。また頼みにくいというのも本音でしょう。
そこで「信用保証協会」という公的な機関に保証人を頼むのです。つまり信用保証協会は直接融資をしてくれるのではなく、保証人として保証してくれるということです。
信用保証協会には様々な保証制度があります。
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1.流動資産担保融資保証制度(ABL保証)
2.小口零細企業保証制度
3.経営力強化保証制度
4.借換保証制度
5.特定社債保証制度
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それぞれの保証制度特徴は以下をご参照ください。
参考:
さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人 全国信用保証協会連合会
融資の特徴3.銀行(プロパー)融資
銀行が融資を行っていることは誰でも知っていることだとは思いますが、そのうち銀行が100%の責任で融資を行うことは限られています。
信用保証協会が保証を行わず、銀行単体で融資を行うことを「プロパー融資」と言います。
保証付融資と違い、プロパー融資は非常にハードルが高いと思ってください。起業間もない会社でプロパー融資はほぼあり得ません。
銀行にとっては万一融資先の会社が返済できなくなった際、全額銀行が損失を被るためです(じゃあ何のための金融機関だよ……というのは置いといて)。
プロパー融資を受けるためには、その銀行の基準があり、経営状態だけではなく社歴や社長の人格なども含めて厳しく評価されています。
どこの銀行でも行われていることはスコアリングです。スコアリングの評価基準自体は渉外担当に聞いても、課長クラスに聞いてもわからないと思います。
ただし、スコアリングには財務諸表が大きく関わってくるため、やはり日々の改善が必要だということは間違いありません。
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1.売掛金が大きくないか、回収不能な売掛金はないか
2.在庫状況と仕入は適切に行われているか
3.固定資産は適切な価格のものであるか
4.研究費、開発費などの動かせない繰延資産はどれ位あるか
5.役員貸付金や役員借入金はないか、使途不明金はないか
6.経営者の人柄や先を見通す目を持っているか
7.事業計画の内容に実現性はあるか、融資に値するか
8.社歴はどれ位か、次期後継者の育成はどうしているか
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といった、様々な要素が絡んできます。銀行担当者と頻繁に連絡を取り合い、足を運び、しっかりと社歴を重ね、業績を積上げていると、あるとき銀行の方からプロパー融資いかがですか?と声がかかることもあります。
銀行の評価に関しては以下も参考にしてください。
参考:
銀行が決算書を格付けする6つの要素と6つの債務者区分
銀行が思わず融資したくなる決算書12項目
銀行、保証協会、日本政策金融公庫の融資の違いまとめ
さて、よく使われる3つの融資機関の違いをご説明しましたが、理解できたでしょうか。
まず、開業資金として調達するのが日本政策金融公庫の融資、次に、法人口座を持った銀行に融資を依頼して行う信用保証協会の保証付融資、そして最後に、恐らく銀行側からの声掛けが多いプロパー融資、という順番が通常ではないかと思います。
冒頭にお話しましたが、組織を大きくしていくための融資は会社の栄養源です。
そのため、融資が活用できる状況であれば、積極的に融資は受けるべきだと思っています。いつ借りられなくなるかわかりませんしね。
但し、融資にはしっかりとした目的意識を持っていなければいけません。融資には5つの目的があります。
融資の目的1.次の事業展開を生む固定資産を買うための融資
融資の目的2.会社の成長スピードを補う時間を買うための融資
融資の目的3.仕入などにスケールメリットを設けるための融資
融資の目的4.将来に備えて返済実績を作るための融資
融資の目的5.乗り切りたい最後の切り札となる運転資金融資
この融資の目的をしっかりと理解した上で、融資をうまく活用できるシチュエーションを作り、融資を活用し、会社を大きく育てていってください。