社長が注意すべき解雇理由とは?4種類の解雇処分と意味

社長が注意すべき解雇理由とは?4種類の解雇処分と意味

解雇はいつか通る道

「せっかく一緒に働いているんだから、俺は最後まで社員を辞めさせない!」

そんな男気溢れる社長もある部分では素晴らしいと思います。ところが、会社の業績は伸び続けるわけではありません。

何の理由もなく、社長の気分だけで従業員を辞めさせることはできませんが、業績が悪くなった場合は必ずリストラというコストカットが必要です。業績回復の見込みがなければ、根本から変えなくてはいけません。

また、社員が会社のお金を横領していた場合はどうでしょうか。それでも、辞めさせないと言えるでしょうか。あまりにもひどい遅刻やルール違反、無断欠勤などはどうでしょうか。

社長には必ず社員を辞めさせるタイミングが1回はあります。それが解雇です。

解雇とは

解雇とは、雇用者から被雇用者に対して労働契約の解除を行なうことです。解雇には被雇用者の同意は必要なく、雇用者からの通告によって成立します。

※わかりづらいので、以後、雇用者=企業、被雇用者=従業員に置き換えます

解雇には4つの種類があります。まず懲戒解雇と普通解雇、そして普通解雇の種類として、整理解雇、諭旨(ゆし)解雇があります。

それぞれどのような解雇なのか見ていきましょう。

解雇の種類1.懲戒解雇(ちょうかいかいこ)

懲戒解雇とは、従業員の横領行為、職務上での不正、重大な過失、業務妨害、犯罪行為などの理由によって、従業員を辞めさせるための解雇です。

企業は、上記の解雇理由があればいつでも従業員を懲戒解雇をして良いわけではなく、解雇理由とこれに対する懲戒の種類・程度を就業規則に明記しなければいけません。

また、当該就業規則が従業員に周知されている必要があります。

ちなみに、公務員の場合は懲戒解雇ではなく懲戒免職と呼ばれます。

懲戒免職は事前の解雇予告や手当の支給がなく、労働基準監督署長の解雇予告の除外認定により、即時解雇となる厳しい処分のことです。

懲罰処分のため、退職金の支給もありませんし、再就職が非常に困難になる可能性もあります。そのため、酌量処置として、事前に諭旨退職を促すこともあります。

解雇の種類2.普通解雇(ふつうかいこ)

普通解雇とは、会社都合による懲戒解雇とは別の解雇理由による解雇の事です。通常、解雇と言う場合は、こちらの普通解雇を指します。

普通解雇の解雇理由も就業規則に定められている必要があり、従業員が納得がいかない場合、客観的な合理性や解雇の妥当性を審査されることがあります。

一般的な解雇理由は、怪我や病気で労働できない状態、著しい職務怠慢、重大な過失、業務妨害、企業関係者に対する暴力や暴言などがあります。

但しそれらは、業務への影響や注意・教育が継続的にあるか、解雇理由の妥当性などを踏まえて、解雇が行なわれる必要があります。

また、普通解雇の場合、企業は従業員へ30日前までの解雇予告、あるいは解雇予告手当ての支給が必要です。

解雇の種類3.整理解雇(せいりかいこ)

整理解雇とは、現在の業績不振が今後も続くことが予測できる場合、人員整理として従業員を解雇することです。リストラは整理解雇にあたります。

整理解雇は会社都合の中でも経営に関する内容であるため、妥当性の判断基準として、以下の整理解雇の四要件に照らし合わせる必要があります。

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整理解雇の四要件1.現状で人員整理の必要性があるか
整理解雇の四要件2.整理解雇以外の努力を十分行ったか
整理解雇の四要件3.合理的かつ公平に解雇対象者を選定したか
整理解雇の四要件4.説明や協議、納得を得る手順を踏んだか
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これら整理解雇の四要件に適合していなければ、解雇無効の判断がされる場合があります。

解雇の種類4.諭旨解雇(ゆしかいこ)

諭旨解雇とは、懲戒解雇対象者を普通解雇処分にしたり、従業員に自発的な退職の説得を行なうことで、懲戒解雇処分を情状酌量とするための解雇のことです。

ちなみに、自発的な退職の説得のことを退職勧奨と言います。

通常、懲戒解雇には就業規則に重い罰則処分が記載されており、社会的、人道的にこれらの処分を下すことが企業として妥当ではない、という判断から諭旨解雇になることが多いようです。

また、退職勧奨自体は情状酌量処置なのですが、あくまでも自発的に退職をするための説得であり、無理矢理辞めさせたり、強圧的に行われる退職勧奨は違法になります。

但し、そもそもの解雇理由が懲戒解雇である場合は、懲戒解雇が認められる可能性もあり、判例としてはどちらかに偏っているわけではなさそうです。

従業員の解雇処分には明確な理由が必要

懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇の4つ解雇には、全て客観的・合理的な解雇理由が必要です。

労働契約法第16条には、客観的・合理的な解雇理由がなく、社会通念上相当と認められないケースにおいては、解雇自体が無効になると明示されています。

特に、普通解雇の場合や退職勧奨において、退職強要と判断されてしまうニュースはよく見かける話です。

この客観的・合理的な解雇理由とはどのようなものでしょうか。

解雇理由1.労働者の病気、怪我

前述しましたが、多くの企業では、労働者の病気、怪我による欠勤が一定期間以上ある場合を休職とし、休職期間満了時点でも復職が困難な場合には解雇、あるいは休職期間の満了をもって退職と扱う就業規則を定めていることがあります。

ただしこれは、仕事以外の理由で生じた病気や怪我でなければならず、仕事における病気や怪我はその範疇ではありません。

解雇の際は、仕事による理由なのかそれ以外なのか、また、復職が本当に困難なのかという判断が必要になります。

解雇理由2.労働能力の著しい欠如

従業員の労働能力が著しく欠如している場合には、程度如何によっては解雇に該当すると判断されます。

ただし、ただちに解雇するのではなく、従業員に対して説明し・教育し、労働能力を向上させるための指導や訓練が相当程度あることが前提になります。

解雇理由3.経歴詐称による被害

従業員が、企業に対して経歴詐称があった場合、解雇の対象になります。但し、経歴詐称によって企業が被害を被った場合のみです。

従業員が意識的に経歴を詐称し、且つ詐称した経歴によって企業に損害を与えてしまった、という条件が必要となります。

例えば、医師免許など業務に必要な資格を取得していると偽った場合は、明らかに病院などに被害があると考えられます。

解雇理由4.倫理的な問題による被害

個人的な理由による倫理的な問題であっても、企業に著しい影響を及ぼしてしまった、または及ぼしかねないと判断される場合は解雇理由になります。

例えば、既婚従業員同士の不倫です。このような不貞行為は個人的な倫理観の問題と言っても、必ず業務に支障をきたす影響を及ぼすと考えられます。

解雇の種類と解雇理由の必要性まとめ

冒頭でお話しましたが、「せっかく一緒に働いているんだから、俺は最後まで社員を辞めさせない!」という社長はいます。しかも、珍しくありません。

非常に良い心意気ですが、この話が成立するためには、まず、その従業員の入社時点での相当な見極め、そして、何事も起こらないであろう社内ルールづくりと徹底した教育体制、さらに、常日頃から意識させる倫理観が必要になります。

従業員を守りたい一心での発言なのであまり否定はできなませんが、時には覚悟をきめて、解雇を通告する必要があることを認識しなければいけません。

組織は人の集まりで成り立っています。普段会社にいない社長と違い、何かの間違いを起こしてしまった従業員と顔を合わせるのは現場にいる別の従業員です。

もし、間違いを起こした従業員の責を問わず、それを他の従業員が不服とした場合、または責を問わないことで解消できない不具合が生じた場合でも、社長が組織全てを守りきれるなら、上記の発言は正当だと考えます。

社長としての責任は雇用する時にも、解雇する時にも発生します。解雇は気持ちの良いものではありませんが、組織を守るために天秤にかかってしまうこともあるのです。

このことを意識して、社長はもう一度解雇に関して学び、考えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、ルールに則って会社が社員に下す罰則のことを「懲戒処分」といいます。この中には懲戒解雇も含まれるため、しっかりと押さえておきましょう。

参考:
社長のエゴで決めちゃダメ!6種類の懲戒処分と意味

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