「経営分析」というと、様々な指標を扱うことになるので難しいという印象を持っている人も多いです。しかし、初心者でも簡単にトライできる分析の視点もあるので、それほど敷居が高いものではないのです。
今回は、経営分析の基本と初心者でも使える分析のポイントをご紹介していきます。
経営分析の基本と目的
経営分析とは、その名の通り企業の経営を細かく分析していくことです。現状を正しく把握するためのツールであり、企業を発展させるために最適な意思決定を行っていくことが目的です。事業の規模がある程度になってきたら不可欠な作業といっても過言ではありません。
経営者の方の中には、経営分析のための指標がたくさんあって、どれを使っていいかわからないという方も多いです。経済・経営などを学んだバックグラウンドがない経営者の場合は、特に抵抗感を感じるかもしれません。
ただ、フィーリングだけで方針を決めていくのではなく、しっかりとしたデータに基づいて事業を展開していかなければリスクが伴います。「なんとなく」や「どんぶり勘定」など経営者のさじ加減で事業が営まれていることも少なくありませんが、しっかりと経営分析を行うことでよりリスクの少ない経営を進めていくことができるのです。
売上金も細分化して分析できる
経営分析の基本は、経営状況を細かく分析していくことにあります。経営状況の指標として、まず思いつくのは「売上金」という経営者も多いのではないでしょうか?実際、売上が減少するということはダイレクトに経営に影響する部分なので、売上金の金額だけは注視しているという方もいることでしょう。
ただ、これまで売上金として一括りにして扱っていた数字も、もっと細分化して分析していくことで、戦略が立てやすくなってきます。決算のときだけ、確定申告のときだけ売上金をきちんとチェックしていたという事業者は、もう少し分析に手間をかけてみると良いでしょう。
例えば、予算との比較・月別推移・年別推移・前年同月比較・同業他社比較など、視点は様々。細かく見ていくことで事業を展開する上で必要なヒントを得ることができることも多いのです。
特に、売上金の変遷を視覚的にわかりやすくすることは重要です。次に表とグラフを並べますが、どちらが分析しやすいか、その違いは一目瞭然です。
単純に数字だけが並んだ表を眺めるよりも、グラフ化して眺めた方が売上金の推移を視覚的に確認することができます。エクセルなどを使った簡単な操作でもこうしたグラフ化は可能なので、個人事業主の方でもハードルが低いと感じるでしょう。過去の売上データを遡り、グラフを作成してみると面白いでしょう。
また、次のグラフでは、曜日別に売上高の推移をグラフ化しています。
毎年ある月だけ売り上げが落ちるようであれば、集客のためのキャンペーンを行うなどの対応を検討することができるかもしれません。闇雲にキャンペーンを打ち出すのではなく、こうした動向に従って事業を展開していくことで成功する可能性が高まります。
経営分析の代表的な指標
経営分析の代表的な指標をいくつかご紹介していきます。名称から「難しそう」と感じる人もいるかもしれませんが、何を意味しているのか噛み砕いて解説します。
1. 収益性分析
収益性とは、企業が収益を上げる力、すなわち資本を基にして利益を獲得する力のことです。収益性の分析を行う方法はいくつかありますが、今回は利益と売上の比率を見ていきます。売上高と売上総利益の比率は、粗利率と呼ばれています。
例えば売上高から材料費・仕入れ価格などのコストを差し引くと売上総利益になりますね。この利益率がどれくらいなのかを分析することで企業が稼ぐ力を測ることができますが、計算式は「(売上総利益÷売上)×100」で表されます。粗利率の推移もチェックしておきたいところです。
2. 安全性分析
安全性とは、会社の借金の返済能力を見る指標です。企業は借金を返済できなくなると倒産するので、借金の返済能力を見ていこうというわけです。資金の状態(=ストック)と、資金の状況(=フロー)を見て判断していきます。
分析の指標はいくつかありますが、例えば「自己資本比率=(自己資本÷総資本)×100」で当てはめて計算すると、企業が借金体質であるかどうかを判断できます。この計算式では、会社の経営をどれくらい自己資本でまかなうことができているかをはっきり示すことが可能。フィーリングではなくしっかりとした数字で把握できることになるのです。
経営分析の指標はまだまだたくさんあり、上記はほんの一例です。ただ、自分の感覚だけで事業を展開するよりも、効率が良いということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
事業内容・状況から考え、必要性の高い指標から活用してみると良いでしょう。
経営分析のまとめ
経営分析は苦手としている中小企業の事業者も多いですが、データの読み解き方に慣れてくると企業の発展に貢献することは間違いありません。規模が小さくても、しっかりと経営分析を行った上で対策していけば、結果もついてくるものです。
敷居が高いと感じていた方も、この機会に経営分析を始めてみましょう。