簡単にわかる経営者、取締役、役員、執行役員の違い

簡単にわかる経営者、取締役、役員、執行役員の違い

経営者と社長は別物?

あなたは、経営者、役員、取締役、執行役員の正確な意味と違いを知っていますか?

私が経営者で思い浮かぶのは京セラの創始者で、KDDIを軌道に乗せ、JALを再生させた経営の神さま「稲盛和夫」氏です。

会社の立ち上げ、成長、再生と全てのパートを難なくこなし、かつ、大規模で影響力のある会社経営に関わり続けているという点で、経営の神さまと呼ぶにふさわしい人物だと思います。

他にも、日本電産の永守重信氏、ニトリの似鳥昭雄氏、ソフトバンクの孫正義氏、ユニクロの柳井正氏、現サントリー・元ローソンの新浪剛史氏など、現在も活躍されている経営者は非常にたくさんいます。

こうした経営者の活躍もあり、これまで以上に「経営者」という言葉に注目が集まっています。様々な媒体で経営者の資質や能力を問う議論がなされ、経営者の仕事と責任に焦点が当たることが多くなったと感じます。

ところで、この「経営者」は社長とはどう違うのでしょうか。また、同じく経営に携わっている「役員」や「取締役」と意味の違いはあるのでしょうか。

それぞれ、明確に違いを把握しておきましょう。

経営者とは

経営者とは、経営方針や経営計画を立案・決定し、会社を経営する人の総称です。つまり、経営者=社長=代表取締役のことです(厳密には違うので後程説明)。

最近では広義にとらえ、経営に携わる経営管理者の総称として使われることもあります。経営管理者とは部門長や取締役のことです。

経営者の仕事

被雇用者として働いている方にとっては、経営者がどのような仕事をしているのかイメージしにくいと思います。

会計と経理と財務の違いのまとめ

参考:
会計と経理と財務の違いとは?意味と担う役割の図説

上図は会計処理の流れにおける経営者(ここでは社長)の役割をあらわした図ですが、経営者は最終決済者としての役割を担っています。

つまり、決算書にOK/NGを出し、日々の業務結果に優良可を判断し、融資などの財務判断を下す役割です。当たり前ですが、適当にYes/Noを出すわけではなく、すべての判断に理由付けが必要になります。

ただし、融資など公的な文章の承認事項は最終決済の証として代表印が必要になるため、代表取締役が記名押印しなければいけません。

経営者の日々の仕事は主に以下の4つ。全て会社全体の方針を決める重要な仕事です。

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・経営方針を立てること
・経営計画を立てること
・組織をつくること
・意見を調整すること
—–

経営者の責任

経営者の責任は、会社の業務執行の意思決定をする役割を担うことです。

(通常は)会社の代表である経営者の責任は、冒頭で話した通り企業の立ち上げ、成長、再生のパート全ての方針を決め、時には業務執行し、会社を成長させ多くの利益を出すことです。

また、会社が倒産した際、経営者は株式会社であれば、有限責任の範囲での責任を負うことになります。但しこれは建前の話しで、最悪の場合、経済的な負担を全て負うこともあります。

取締役とは

取締役とは、取締役会の構成メンバーのことです。取締役会とは会社の業務執行の意思決定機関であり、3人以上の役員で構成されています。上場企業の場合は、取締役会の設置が義務付けられています。

また、会社の業務執行の意思決定をする役割を担っています。つまり、取締役は経営者の1人であると言えます。

日本の会社では、一般的に社長、副社長、専務、常務などの役職名を持った方で取締役会が構成されている場合が多いですね。

取締役の仕事

取締役の主な仕事は以下の4つです。

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・会社運営の重要事項や方針決定をし、業務執行を代表取締役に委任すること
・代表取締役の業務執行の監査をすること
・代表取締役の選任、解任をすること
・その他重要事項の業務執行における意思決定をすること
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取締役の責任

取締役は、代表取締役と近い責任を負わなければいけません。取締役の責任は損賠賠償責任と連帯責任です。詳細は以下を参考に。

顧客に損害を与えれば損害賠償を負わなければいけませんし、株主がいれば株主に対する責任も発生します。

そしてこのような経営責任は、社長=代表取締役だけではなく、取締役も負わなければいけない場合があります。

参考:
社長や取締役の経営責任とは?損害賠償責任と連帯責任

代表取締役と社長の違い

代表取締役とは、取締役の代表のことです。取締役の中から選任され、株式会社を代表する代表権を持つ取締役です。

ほとんどの場合が、社長=代表取締役なのですが、社長と代表取締役が別の会社もあります。

例えば、「代表取締役会長、取締役社長」であったり、「代表取締役専務、取締役社長」という場合もあります。また、「代表取締役社長、代表取締役専務」と複数人が代表権を持つ場合もあります。

代表権は、公的な最終意思決定権と同じ意味です。つまり、銀行や他社との意思決定交渉、契約締結などは代表権を持っている方でなければ行えません。

そして、それは社長である必要はなく、1人である必要もないということです。

では、社長とは何でしょうか?

社長とは企業組織内で定める役職名のことで、公的・法律的には何の効力も持たない肩書のことです。

企業によっては社長という役職を設けず、名刺にCEO、ディレクター、マネージャーとだけ書かれている方もいます。

言ってみれば、一家の家長はお父さんですが、お母さんは元々資産家なので土地建物の不動産の所有者だというイメージです。不動産においては、公的に、家長には何の効力もありません。

役員とは

役員とは、会社法では取締役、会計参与、監査役を合わせた総称のことです。

一般的には法律関係なく社長、専務、常務などの経営者や上位管理職も含めて、会社組織の上層部をあらわすために使われることが多い言葉です。

役員の仕事

役員の仕事は、上記通り経営や組織運営にかかわる様々な役職を指す言葉なので、仕事内容を明確にすることはできません。

敢えて定義をすると、「役員会で決められた経営方針を部下に伝え、代表取締役の補佐をすること」が主な仕事になります。

役員の責任

仕事と同様に、役員の責任の範囲も役職や業務内容に応じて変わります。

執行役員とは

執行役員とは、取締役会で決定した業務内容を執行をするための役職です。

よく「役員=取締役」と間違われるため、執行役員を取締役だと勘違いする方がいますが、執行役員も肩書であり法的な位置付けはありません。法律上は従業員として扱われます。

参考:
実は間違って使っていた社員、従業員、職員の違い

執行役員は経営者ではなく従業員のプロフェッショナルであり、従業員の最高位と位置付けられることが多いですね。

執行役員の仕事

執行役員の仕事は、取締役会で決定した重要事項を実行する役割を担っています。

会社は、意思決定をする取締役会と業務執行を行う執行役員で作業を分けることで、作業の効率化を図ります。

執行役員の責任

執行役員の責任範囲は、あくまでも従業員なので従業員と同じ扱いになります。

具体的には何らかのミスを犯した場合、その従業員の重過失が明確で会社が主張する損害額に妥当性があり、損害額の分担が公平で妥当と認められる限度の範囲内の場合のみ賠償請求の責任を負います。

経営者、取締役、役員、執行役員の違いまとめ

普段私たちは会社に関係する職位や役割などに関して、法律に基づく言葉と形式上の言葉を混ぜて使用しています。

もう一度おさらいをすると、

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法的に認められている役職名・・・取締役、代表取締役
法的に認められていない役職名・・・経営者、役員、社長、副社長、専務、常務、執行役員
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ということです。また、「代表取締役=社長」ではないことや代表取締役を複数人任命できるということも、この際しっかりと覚えておきましょう。

特に、今会社経営に携わっている方はこれらのことを覚えておくだけで、他社の現状がこれまでよりもよく見えてきます。

これは変に他社を勘ぐるというお話ではなく、組織の作り方から大いに学ぶべきことがそこにあるかもしれないということです。

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