正社員登用の動きと正社員不足…人材不足解消に向けて

正社員登用の動きと正社員不足…人材不足解消に向けて

近年、非正規社員を正社員として採用する動きが高まりました。現在も人材不足に悩んでいる企業は多いですが、長期的に働いてくれる人材をしっかり確保できている企業もあります。
今回は正社員確保のあり方にフォーカスしていきます。

正社員登用と正社員不足

1990年代に正社員をリストラする動きがあり、賃金が安く済むパート・派遣社員に置き換えられるようになりました。その後、””派遣切り””などの言葉も誕生するなど、待遇については問題視されてきた経緯があります。

近年は労働契約法が改正され、ある企業において通算5年以上契約が更新されている契約社員は、本人が希望すれば無期労働契約を結ぶことができるというルールが誕生しました。非正規の従業員をいわば使い捨てにするような風潮が疑問視され、適切な待遇をしていこうという動きが高まっているのです。

もちろん主婦や学生などが非正規の職員として働くことを望んでいれば問題ありませんが、実際には正社員になりたくてもなれるチャンスがない人も一定の割合で存在します。

最近は、求人情報などで””正社員登用制度あり””という記載もよく目にするようになりました。そこに書かれている通り積極的に正社員登用できれば、イメージ的にも好印象となるでしょう。

ただ、企業が正社員登用を積極的に行っている一方で、多くの企業が正社員不足を実感していることも事実で、課題はまだまだ多いのも現状です。雇われる側からすると、非正規雇用では収入が少ない分自由度が高いというメリットがありますが、正社員登用されることで厳しいノルマが課されたり、残業や休日出勤が発生する可能性があったりする、というデメリットや不安を感じるケースも多いようです。

働きやすい環境づくりで人材確保

2017年に帝国データバンクが発表した調査結果によると、調査の対象となった企業のうち「正社員が不足している」と回答した企業は4割超にも達しました。正社員登用の動きが少しずつ高まっている反面、まだ人材不足に悩んでいる企業は少なくないのです。

人材不足に悩んでいる業界は、飲食や小売業、娯楽業、運輸業などがあり、正社員を確保できなければパートに支払う賃金をアップさせて、非正規の従業員をなんとかして確保しなければなりません。実はこの非正規社員に関しても3割近くの企業が人材の不足を感じているなど、人材不足は企業運営に大きな影響を与えています。

正社員登用してもらいたいと考える被雇用者がいるにもかかわらず、企業が人材不足を実感しているということは、矛盾が生じているともいえます。どうしたら従業員が「正社員として長く勤めたい」と感じられる職場環境にできるかどうかを考え、安定した雇用を生み出していくことは経営者の責任ともいえます。

例えば、全国に店舗を持つスターバックスコーヒーでは、非正規の従業員の間では「正社員になると全国に転勤があるのではないか」との不安がありました。そこでスターバックスが””全国転勤OK””か””勤務地限定””にするかを従業員が選択できるようにしたのです。そうすることで、非正規の従業員はチャンスがあったときに安心して正社員登用という道を選べるようになりました。

飲食業界では人材不足が深刻といわれ、パートの賃金を多く出して人材を確保しているとされていますが、こうした企業は環境づくりによって安定的に労働力を確保することにつながるでしょう。

「能力主義」で人材を見極める

日本国内では、やはりまだ”年功序列””の風潮が色濃く残っており、学生時代から先輩・後輩といった区別の仕方は強いものです。ポジションも出世も年齢によって決まるケースも少なくありません。

ところが、海外では、能力や実績を適切に評価してもらうような仕組みが整っていることが一般的です。実際、筆者が海外の大学に留学した際には、外部の評価者が学生や教員の評価を行っていました。年功序列という古い考え方ではなく、その人の能力を適切に評価していくという姿勢は企業の発展にとって必要な要素です。

経営者は、年齢や経歴などの先入観にとらわれず、会社に貢献してくれる人材となりうるか見極め、非正規社員であっても積極的に正社員登用していくための目を養うことも求められます。能力に対して適正な評価をしてくれる企業という雰囲気を作ることは、社員のモチベーションアップにもつながっていくでしょう。

実際、海外のある工場では作業員のレベルを作業着で色分けし、定期的な評価でスキルアップしたと判断されれば作業着の色と支払われる賃金が変わるという方法を取り入れています。このケースでは多くの従業員が長期的に高いパフォーマンスで仕事に取り組んでおり、能力に応じた評価や報酬のアップをモチベーションに仕事に取り組んでいるようです。

「この人材は使えない」と否定的に見るだけでなく、「どうしたらこの従業員のパフォーマンスがアップするのか」という教育者の視点を持つことも経営者には求められます。

正社員登用まとめ

人材の需要と供給のバランスは業種や時代によって差が出てくるものです。人材不足が原因で企業の発展が妨げられることのないよう、能力主義で優秀な人材を確保していくことをおすすめします。

どんなシチュエーションにあっても人材不足に悩まない企業になるためには、待遇や就労環境などを従業員の目線で考えることも重要なのです。

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