起業するなら新創業融資は知っておくべき!
起業時に欠かせないことは、事業計画と資金計画を立てることです。
事業計画書の作り方、資金計画書の作り方はどちらも別途記事化するとして、今日は日本政策金融公庫の制度融資である「新創業融資制度」のご紹介をしたいと思います。
何度でも言いますが、健全な経営を行うためには、十分な資金が必要不可欠です。
そして、資金を確保するための手段として、融資、助成金、補助金の種類を知っておくことには、多くの時間を割いても構いません。
重要な助成金、補助金の種類に関しては、以下を参考にしてください。
1.起業時の助けになる「創業補助金」
2.採用コストを助成するトライアル雇用奨励金
3.売上が減少した時に…「雇用調整助成金」
4.従業員を育成する「キャリア形成促進助成金」
5.地域特有の助成金・補助金制度
さて、もう一つの融資ですが、起業にあたってここに目が向かない社長は意外なほど多くいます。
ところが、融資を一番受けられる可能性が高いのはキャリアの浅い起業時です。つまり、起業の際に一番考慮しなければいけないことが、様々な融資制度の活用なのです。
私は、会社を設立したばかりの社長、起業を考えている方にとって、この「新創業融資制度」は非常に有効な制度かもしれないと考えています。
もちろん融資であるため審査はありますが、その審査を通過するためにどうすれば良いのか、何を知っていなければいけないかを説明したいと思います。
日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?
新創業融資は、公的な金融機関である日本政策金融公庫が行っている融資制度です。
日本政策金融公庫は、日本国内において起業や独立をサポートする融資制度を取り扱うために、財務省所管の特殊法人として2008年10月1日に設立されました。
数ある創業融資の中でも、新創業融資制度の特徴は「無担保、無保証、連帯保証人不要」という驚きの条件で、対象は法人だけでなく個人事業主も含まれます。
まだ実績がない新設法人(個人事業主)が対象なだけに、この創業融資を受けることができれば、あなたの事業計画も飛躍的に拡大することができるかもしれません。
新創業融資制度の概要
新創業融資制度の概要は、以下の記事で簡単に伝えましたが、2014年3月1日に「創新創業融資制度の改正」があり、創業者に有利な条件が増えています。
融資の上限額:1,500万円 → 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
自己資金:融資額の1/3以上必要 → 融資額の1/10以上必要
融資期間(設備資金):10年 → 15年(うち、元本支払い据置期間2年以内)
融資期間(運転資金):5年 → 15年(うち、元本支払い据置期間1年以内)
利率:2.6%(5年以内)~3.1%(15年以内)
ざっくり言うと上記通りなのですが、少し特徴などを分解して話をしましょう。
新創業融資申請に必要な条件と特徴
誰でも新創業融資申請を行えるわけではありません。
現在事業をしている、これから起業したいという前提以外に、以下の条件が必要になります。
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新創業融資制度申請に必要な条件
1.起業から2期以上経過していない(税務申告を2期を終えていない)こと
2.雇用創出を伴う事業、又は同じ業種の企業に6年以上勤務経験があること
3.創業資金の1/10以上を自己資金で用意すること
4.別の融資制度と併用すること
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4については知らない方もいると思いますが、新創業融資は日本政策金融公庫が行っている以下の融資制度と併用をしなければいけません。
各融資制度に関しては、「新創業融資制度|日本政策金融公庫」こちらをご覧ください。
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・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家資金
・再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
・新事業活動促進資金
・食品貸付
・生活衛生貸付(一般貸付および振興事業貸付に限る)
・普通貸付(食品貸付または生活衛生貸付(一般貸付)の対象となる方)
・企業活力強化資金
・IT資金
・海外展開資金
・地域活性化・雇用促進資金
・環境・エネルギー対策資金
・社会環境対応施設整備資金
・企業再建・事業承継支援資金(第二会社方式再建関連及び事業承継関連に限る)
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この中から併用できる融資制度を探してください。
新創業融資制度の特徴1.無担保、無保証、連帯保証人不要
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1.無担保…土地建物や機械などの設備類等、返済原資となるようなものが必要ない。
2.無保証…ここでは本人保証のこと。法人に融資するのであって、代表取締役の個人保証を取らない。
3.連帯保証人不要…代表取締役以外の第三者による連帯保証人がいらない。
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通常の金融機関においては、1と2、または2と3の組み合わせで保証を必要とします。
新創業融資制度の特徴2.金利は高い?
結論から言ってしまうと安いです。
2.6%(5年以内)~3.1%(15年以内)となっており、一見、銀行融資に比べて高いと感じる方もいると思いますが、メリット面を考えると非常にお得です。
恐らく起業して、銀行から融資を受けたいと思っても、銀行単体から融資(プロパー融資)を受けることは難しいでしょう。ほとんどの方が信用保証協会付きの融資になるはずです。
その場合、金利はあまり変わらなくなります。しかも、信用保証協会付きの融資でもある程度の事業実績が必要ですし、担保や連帯保証人も必要な場合がほとんどです。
新創業融資制度の特徴3.申請後1か月半というスピード
金融機関での融資の場合、申請から融資実行までに2~3か月ほどかかりますが、新創業融資はおよそ1か月半と言われています。
このスピード感も通常の融資を知っている方であれば、非常に大きなメリットだとわかるはずです。
新創業融資制度を受けるための心構え
では、新創業融資制度の申請をする前に、心構えをしっかりと押さえておきましょう。
新創業融資制度は公的資金、つまり税金です。創業者を支援するためとは言え、日本政策金融公庫もほいほいと出すわけにはいきません。
そのため、起業初期の社長にとって融資審査はハードルが高く、自分で融資手続きを行うと融資審査通過率は20%以下という狭き門です。
新創業融資の確率を最大限上げるためには以下の2点をしっかりと覚えておきましょう。
融資審査の心構え1.税理士などの専門家に依頼する
起業して事業を行っていくにあたって、必ず顧問税理士とは契約しましょう。良い税理士の見分け方はこちらをご参考に。
決算処理や財務処理を自分たちで行うのは、費用対効果の面で非効率的です。
どちらにしろ今後税理士に色々な処理を行ってもらうのであれば、この新創業融資制度もお手伝いしてもらった方が効率が良いでしょう。
着手金+成功報酬で支援してくれる税理士もいれば、完全成果報酬で請け負ってくれる税理士もいます。顧問税理士とは分けて考えても良いと思います。
調べてみるとわかりますが、成功報酬は融資金額の数%の場合が多いため、失敗する確率を考えればプロに頼んだ方が圧倒的にお得です。
融資審査の心構え2.公的融資のお金を軽く考えない
「金は命よりも重い…!」ざわ…ざわ…(by利根川幸雄:賭博黙示録カイジ)
冗談はさておき、公的に限らず融資を軽く考えている人は少なくありません。根底には「向こうも仕事だから」とか「公的機関だから」という思いがあるのかもしれませんが、
返ってくる見込みのない人にお金は貸してくれません!
世の中には融資を受けたい人がゴマンといるので、通常の金融機関であろうが、公的金融機関であろうが、返ってくる見込みのある人を選んで融資をしたいんです。
必要な書類を期限内に用意するのはもちろん、誠実な態度としっかりと練り上げられた事業計画書の準備を怠らないようにしましょう。
もちろん、税理士に新創業融資制度の依頼をしても同様です。
依頼したからといって、融資を受けるのはあなたの会社です。あなたが本気にならなければ、どんなに成功確率が高い税理士にお願いをしても創業融資の審査通過は難しいでしょう。
新創業融資制度の申請方法
ここで細かく記載するつもりはありません。必要であれば以下をご覧ください。
参考:
新創業融資制度|日本政策金融公庫
前述した通り、新創業融資制度の申請や申請の注意事項はプロである税理士に聞いてください。決して自分の力だけで申請に臨まないでください。
必要な物だけざっと記載します。
新創業融資申請制度に必要な書類
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1.創業計画書…事業計画書です。1期目が終わっていれば財務諸表、これからの場合は売上計画とコスト計画など。
2.資金繰り表…新創業融資で必要な額を調達した場合(それ以外も)の資金繰り表です。最低3期分は作ります。
3.見積書、請求書…設備等にかかる費用算出(見積書など)されたもの。
4.商業登記簿謄本…履歴事項全部証明書でも良い。
5.借入申込書
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その他、土地などの担保提供により融資を受けることもできるので、その場合は不動産の登記簿謄本が必要になります。
また、創業計画書と借入申込書は日本政策金融公庫にひな形があるので、それを使わなければいけません。
無担保無保証で最大3000万円の創業融資のまとめ
新創業融資制度は、これから起業をする社長や事業を始めたばかりの社長にとって非常に魅力的な資金調達手段の1つです。
大きな夢と目標を抱いている社長は、今燃えている真っ最中でしょう。
だからと言って、「よーし、新創業融資も自力で融資審査を通過してみせるぞー!」と全て自分で背負い込んでしまわずに、任せられるものはプロに任せてしまった方が効率が良くなります。
あなたの情熱は事業計画書を作ること、作った事業計画書にそって最大限の成果を上げることに注ぎ込んで、時間を有効活用してください。
まずは信頼できる税理士に話をして、あなたの事業計画と新創業融資の申請の相談をしてみましょう。
信頼できる税理士選びのポイントは以下をご参考に。
また、融資などの資金調達には以下の目的が必要です。なぜ融資を受けなければいけないかを認識して、資金調達をするためのマインドを作ってから、行動に移すようにしましょう。
融資の目的1.次の事業展開を生む固定資産を買うための融資
融資の目的2.会社の成長スピードを補う時間を買うための融資
融資の目的3.仕入などにスケールメリットを設けるための融資
融資の目的4.将来に備えて返済実績を作るための融資
融資の目的5.乗り切りたい最後の切り札となる運転資金融資