確定申告の青色と白色とは?個人、法人のメリットデメリット

確定申告の青色と白色とは?個人、法人のメリットデメリット

確定申告には青色と白色がある

以前、確定申告が必要な人、確定申告が不要な人、確定申告をした方が良い人の条件のお話をしました。

参考:
5分で理解!確定申告が必要な人、不要な人と条件まとめ

ちなみに確定申告の意味は以下の通りです。

1.個人が、その年1月1日から12月31日までを課税期間として、その期間内の収入・支出、医療費や寄付、扶養家族状況などから所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定すること

2.法人が、原則として定款に定められた営業年度を課税期間としてその期間内の所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき法人税額を確定すること

3.消費税の課税事業者である個人又は法人が、課税期間内における消費税額を計算した申告書を税務署へ提出し、その納税額を確定すること

参考:
確定申告 – Wikipedia

確定申告は、法人や個人事業主に限ったことではありません。サラリーマンやフリーターでも確定申告が必要な場合や確定申告をした方が得な場合があります。

確定申告には2種類の青色申告と1種類の白色申告があり、申告者はその方法を選択できます。

白色申告は申告に手間がかからない分、節税効果がないことが特徴で、青色申告は申告に手間がかかる分、節税効果が高くなっています。

さらに青色申告は条件(帳簿の付け方)の違いによって、10万円の特別控除か65万円の特別控除かを選択できます。

ではそれぞれの確定申告の特徴と違いを見ていきましょう。

青色申告と白色申告の違い

前述した通り確定申告には以下の3種類があり、それぞれ特徴があるため、自分にあった申告方法を選択した方が良いでしょう。

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・青色申告(10万円の特別控除がある)
・青色申告(65万円の特別控除がある)
・白色申告
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確定申告の比較1.申告の手間

確定申告にかかる手間が簡単なものは白色申告です。ただし最近はあまり差がなくなってきました。

白色申告 > 青色申告(10万円の特別控除) > 青色申告(65万円の特別控除)

確定申告の比較2.節税効果

確定申告を行うことで節税のメリットが高いのは青色申告の65万円控除のパターンです。

青色申告(65万円の特別控除) > 青色申告(10万円の特別控除) > 白色申告

確定申告の比較3.単式簿記と複式簿記

青色申告(65万円の特別控除)の場合は複式簿記による記帳の義務があり、青色申告(10万円の特別控除)と白色申告の場合は簡易簿記による記帳の義務があります。

単式簿記とは、「何にいくら使い、いくら残ったか」を記す家計簿のようなイメージです。旦那さんの手取り給料が40万円だとしたら、その40万円を何に使って、いくら残るかを記します。

複式簿記とは、家計簿に加えて、家庭の財産とお金の流れ一覧などを作るイメージです。家計簿には付けない家財道具の価値、家を建てた時に残っているローンと不動産の価値、親からの資金援助、子どもの教育ローンなど、お金の流れ全てを記録に残します。

確定申告の比較4.必要な帳簿類

各申告方法で、単式簿記と複式簿記によって書かれる必須帳簿類は以下のように分かれます。

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青色申告65万円特別控除
・仕訳帳
・勘定元帳
・預金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳

青色申告10万円特別控除
・現金出納帳
・預金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳

白色申告
・決定帳簿
・任意帳簿
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確定申告の比較5.必要な決算書類

各申告で、必要な決算書類は以下のように分かれます。

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青色申告65万円特別控除
・損益計算書
・貸借対照表

青色申告10万円特別控除
・損益計算書(青色申告決算書)

白色申告
・損益計算書(収支内訳書)
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確定申告の比較6.事前の届け出

青色申告をする場合は、最寄りの税務署に対して事前の届け出(青色申告承認申請書)が必要、白色申告をする場合は事前の届け出が不要です。


このような違いがある青色申告と白色申告ですが、申告する金額(収入)が多め、または複数年続く場合は青色申告をお勧めします。

個人事業主としてしっかりと生計を立てていけるのであれば青色申告を選択した方が良いので、以下を目安に考えてください。

個人事業主になるための所得目安は?
年間所得20万円未満
年間所得20-50万円
年間所得50-100万円
年間所得100-500万円
年間所得500-1,000万円
年間所得1,000万円超

参考:
個人事業主のメリットデメリットと具体的な所得目安

その理由となる青色申告のメリット、デメリットを見ていきましょう。

青色申告のメリット1.業績によって控除額を選択できる

青色申告は帳簿を複式簿記で管理していれば65万円、簡易簿記で管理していれば10万円を課税所得から控除できます。これを「青色申告特別控除」と言います。

年度の途中に起業した場合でも、上記の控除額を月割りする必要はありません。青色申告の申請が承認されていれば、最大65万円または最大10万円が全額控除できます。

最大なので、例えば所得金額が40万円なら青色申告特別控除額も40万円となります。課税所得の計算は以下の通り。

課税所得=収入-経費-各種引当金、準備金等

ちなみに上記通り、課税所得は収入額のことではありません。例えば、100万円で知人から購入した200枚の古着を綺麗に刺繍したり、ボタンを変えてリペアし、350万円で売ったとします。刺繍糸やボタンには30万円かかりました。

この場合の収入は350万円ですが、経費は100万円+30万円です。つまり、課税所得は220万円ということになります。さらに、青色申告をしていた場合、220万円-65万円=155万円が課税所得です。

この課税所得155万円に対して税金がかかるのですが、課税所得の税率は所得額によって変動します。国税庁のサイトに記載されているので、そちらを参考にするとよいでしょう。

参考:
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

課税所得と納税額の目安

課税所得=収入-経費-各種引当金、準備金等

この式によって導き出される課税所得にかかる納税額の目安を算出してみました。

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・課税所得100万円の場合、納税額は50,000円
・課税所得200万円の場合、納税額は102,500円
・課税所得300万円の場合、納税額は202,500円
・課税所得400万円の場合、納税額は372,500円
・課税所得500万円の場合、納税額は572,500円
・課税所得600万円の場合、納税額は772,500円
・課税所得700万円の場合、納税額は974,000円
・課税所得800万円の場合、納税額は1,204,000円
・課税所得900万円の場合、納税額は1,434,000円
・課税所得1,000万円の場合、納税額は1,764,000円
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日本は所得税が累進課税になっているため、所得が大きいほど65万円の控除で得られるメリットが大きくなるということです。

ちなみに先程の古着のリペア販売をして課税食が155万円の場合は、納税額はおよそ75,000円ということになります。65万円の控除がなければ、納税額は10万円を超えます。

青色申告のメリット2.赤字は3年繰り越すことができる

日本の会計には繰越欠損金という制度があります。簡単に説明すると、その年の赤字を申告する(損失申告)ことで、3年に渡って所得の相殺を行うことができ、納税額を抑えることができるというものです。

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・2009年の確定申告で、課税所得額がマイナス200万円だった場合、その200万円は2012年まで繰り越すことができます。
・2010年の確定申告で、課税所得額がマイナス100万円だった場合、その100万円は2013年まで繰り越すことができます。
・2011年の確定申告で、課税所得額がプラス200万円だった場合、2009年と2010年のマイナス300万円を相殺することで、本来102,500円の納税額がゼロになります。
・2012年の確定申告で、課税所得額がプラス300万円だった場合、2010年のマイナス100万円が残っているため、相殺して、本来202,500円の納税額が102,500円になります。
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純損失の繰戻還付

純損失の繰戻還付とは、繰越欠損金とは逆で前年は黒字だったのに今年は赤字になってしまったという場合に発生する還付金制度です。

考え方は繰越欠損金と同様で、今年の赤字分を前年の黒字分と相殺し、前年度に収めた納税額を還付してもらえるというものです。

法人の繰越欠損金

繰越欠損金の制度は、同じ青色申告でも個人と法人では異なります。個人や個人事業主の場合は3年間の繰越までですが、法人の場合は10年の繰越が可能です。※中小企業のみ

繰越欠損金の改正-中小企業の場合

繰越欠損金の改正内容は、中小企業と大企業で分けられます。資本金1億円以下の普通法人や公益法人については現行通り、所得金額の全額を控除することができます。

参考:
繰越欠損金とは?2015年4月法改正の内容と注意点

青色申告のメリット3.家族への給与を必要経費にできる

仮に発生した所得を事業所得とする場合、事業所得を家族(従業員扱い)に給与として支払いうことで経費にできます。

もちろんその場合、
課税所得=収入-経費-各種引当金、準備金等

この計算式に当てはめられるため、課税所得額は少なくなります。このような家族に対する給与のことを専従者給与と言います。

専従者に該当する方は、「同居または生計を同じにしている15歳以上の配偶者や親、祖父母、子供など」です。この辺りをゴニョゴニョして、せっせと節税対策に取り組まれる方も多いようですが。

ただし、専従者は所得税の扶養控除や配偶者控除の対象から外れてしまうため、将来にわたってどちらの方が良いかを考えなければいけません。

白色申告の専従者給与は?

白色申告でも専従者給与のうちの一定額であれば控除対象になります。配偶者で86万円、親、祖父母、子供などの親族なら50万円の控除が上限です。

そのため、課税所得が600万円で、配偶者に300万円の給与を支払うと仮定すると、

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青色申告の場合
600万円-300万円=300万円
300万円の納税額は202,500円

白色申告の場合
600万円-86万円=514万円
514万円の納税額は600,500円
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上記のように納税額に40万円もの差がでることになります。

青色申告のメリット4.30万円未満の固定資産は即時償却の経費にできる

パソコンやOAデスク、プリンター、ソファ等応接セットなどの事業に使った経費の中で固定資産に分類されるものは、減価償却資産として耐用年数に応じて数年かけて経費処理されます。

ただし、事業規模が小さい場合や一時所得の意味合いが強い収益の場合、即時償却で処理した方が計算しやすく、次年度以降も手間がかかりません。

もし青色申告であれば、1セットに付き30万円未満の減価償却資産は取得した事業年度で全額を経費にできます。これを「少額減価償却資産の特例」と言います。

少額減価償却資産の特例は、その事業年度で固定資産を取得した合計額300万円を限度に損金算入できます。ちなみに、この特例は平成28年3月31日まで延長対応されていますが、その後はどうなるかわかりません。

なお白色申告の場合は、10万円未満の減価償却資産に対して即時償却が認められています。

参考:
中小企業や個人事業主が使える少額減価償却資産の特例とは

青色申告のメリット5.事業主は自宅兼オフィスで家賃や電気代の一部も経費にできる

青色申告の場合、賃貸であれ持ち家であれ、オフィス兼としていれば家賃や光熱費などを割合に応じて経費にできます。

例えば家賃の場合、仕事で使用する床面積の割合が基準になります。その部屋が全体の床面積の25%を占めているなら、家賃が15万円だとすると37,500円分が経費計上できます。

同様に、電気代や電話代なども割合に応じて必要経費に計上できます。

青色申告のデメリット1.税務署に申請が必要になる

なかなかメリットが多そうな青色申告ですが、逆にデメリットは何でしょうか。一言で言ってしまうと”手間”です。

青色申告をで確定申告を行いたい場合は、まず最初に「所得税の青色申告承認申請書」を最寄りの税務署に届け出る必要があります。

参考:
所得税の青色申告承認申請書:国税庁

青色申告の申請を行うと毎年確定申告が必要になります。そのため、安定的に所得が発生する方がうまく青色申告を活用することが望ましいでしょう。

逆に青色申告をやめたい場合も税務署に届け出を行います。

青色申告のデメリット2.複式簿記での記帳が必要になる

青色申告では、損益計算書と貸借対照表の両方を作成し、決算書として毎年3月15日までに提出しなければいけません。また前述のとおり、必要帳簿類も増えるため管理コストがかかります。

簿記を習得している方、記帳や計算が苦にならない方であれば自分で決算書類等をまとめれば良いのですが、面倒な上に、後の税務署対応を考えると、税理士に任せてしまうことも1つの手段でしょう。

青色申告と白色申告の違いとメリットデメリットまとめ

主に青色申告に注目して、白色申告との違いとメリットデメリットをまとめてみました。

ここで気になるのは、青色申告と白色申告のどちらにメリットがあるのか、その目安はいくらぐらいの所得なのかということです。

どこまで節税対策をするかによりますが、白色申告よりも青色申告が確実にお得だと言える目安は、

課税所得=収入-経費-各種引当金、準備金等

収入が100万円程ではないかと考えます。

例え、65万円の特別控除全額が適用されない課税所得だとしても、自宅兼オフィスの損金算入、専従者給与の経費化、3年間の繰越欠損金と純損失の繰戻還付、30万円未満固定資産の即時償却などを考えると十分なメリットがあるはずです。

また、不動産収入や株式配当がある方は決算書を作成する必要があるので、青色申告にしなければいけません。

どちらにしても青色申告の帳簿付けは面倒なものです。会計処理に明るくない場合は月額2万円ほどで顧問税理士と契約し、10-15万円ほどで決算書対応してもらう選択を考えても良いでしょう。

参考:
顧問税理士の業務内容は?確定申告や訪問費用の目安は?
会社の成長に繋がる税理士の選び方12のポイント

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