接待交際費の非課税枠上限拡大と100%損金算入で何が変わる?

接待交際費の非課税枠上限拡大と100%損金算入で何が変わる?

直近2回行われた接待交際費の税制改正

2013年4月、2014年4月に行われた税制改正のうち、最も話題になったのは接待交際費に関してでしょう。

本来事業に使われるお金は”経費”なので、全て非課税で然るべきです(個人的な意見)。

ただこれまで中小企業においては、接待交際費のみ使用金額のうち10%が課税対象、大企業においては100%課税対象となっていました。

この規制が緩和され、中小企業であれば100%損金算入、大企業であれば50%の損金参入になったとことは、かなり大きな変化だと言って良いでしょう。

では税制改正によって、具体的に接待交際費の何がどのように変わったのか詳細を見ていきましょう。

ちなみに接待交際費とは、租税特別措置法における「交際費等」と記述されるもののことで、交際費等は交際費、接待費、機密費その他の費用をあ合わせたものを「接待交際費」としています。

2013年4月以前の接待交際費の取り扱い

税制改正以前の接待交差費の取り扱いは以下のものでした。

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2013年4月以前の接待交際費の取り扱い

・接待交際費が損金算入できるのは資本金1億円以下の中小企業のみ
・中小企業が支出する接待交際費の10%には税金がかかる
・接待交際費が年間600万円を超えると超過分は全額課税される
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つまり接待交際費という仕訳が活きるのは中小企業のみで、接待交際費に該当すれば損金算入されるのですが非課税枠は90%まででした。考え方は以下の通りです。

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中小企業の旧接待交際費の考え方

・接待交際費380万円の場合
380万円×10%=38万円 38万円が課税対象

・接待交際費850万円の場合
850万円-600万円=250万円
600万円×10%=60万円
250万円+60万円=310万円 310万円が課税対象
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ちなみに中小企業の定義は以下の通り。それ以外は大企業ということになります。

製造業:資本金3億円以下又は従業者数300人以下
卸売業:資本金1億円以下又は従業者数100人以下
小売業:資本金5千万円以下又は従業者数50人以下
サービス業:資本金5千万円以下又は従業者数100人以下

参考:
日本の企業数、倒産件数、赤字会社の割合、上場企業数など

2013年4月+2014年4月税制改正後の接待交際費の取り扱い

2013年4月と2014年4月の税制改正により、接待交際費の取り扱いは以下のようになりました。

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中小企業の場合は以下どちらかを選択

1.接待交際費の上限を800万円として経費計上できる
2.接待交際費のうち飲食費(接待飲食費)の50%を経費として計上できる

大企業の場合は以下

・接待交際費のうち飲食費(接待飲食費)の50%を経費として計上できる
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中小企業の場合は、上記1と2どちらかを選択しなければいけないため以下のように考えます。

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1の場合の接待交際費の扱い:
例えば接待交際費が3,000万円、そのうち飲食費が2,000万円だとすると、総額3,000万円のうち800万円が経費計上できるので、損金不算入分は2,200万円となります。

2の場合の接待交際費の扱い:
飲食費2,000万円の50%である1,000万円が経費計上できるため、損金不算入分は2,000万円となります。
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つまり、接待交際費が多く、かつ飲食の割合が高い場合は2の方が得になる可能性が高いということです。

接待交際費に認められる条件と具体例

では、そもそも接待交際費とはどのような経費が該当するのでしょうか。一般的な接待交際費の条件は以下のように決められています。

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一般的な接待交際費の条件

1.支出の相手方が事業に関係のある者
2.支出の目的が事業関係者との親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ること
3.行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
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これらに加えて、税制改正によって飲食かどうかの基準ができました。飲食の基準は以下のように決められています。

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接待交際費の中で飲食に該当する条件

1.得意先等を接待して飲食するための「飲食代」
2.飲食等のために支払う「テーブルチャージ料」や「サービス料」等
3.飲食等のために支払う「会場費」
4.得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」
5.飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」
など
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というわけで上記がどのような接待交際費に該当するのか、具体的な事例を見てみましょう。

接待交際費事例1.取引先の社員と自分を合わせて5人でランチをし15,000円を支払った

この場合は飲食に該当し1人あたり5,000円以下に収まっています。これは会議費になるため、接待交際費に計上する必要はありません。

接待交際費事例2.親睦を深めるため社内の役員と社員数名で飲みに行った

同じ会社内での飲食は社内交際費に該当するので、接待交際費として計上します。仮に1人あたり5,000円以下だったとしても、会議費での計上はできません。

接待交際費事例3.取引先の社員を飲食で接待し帰りのタクシー代を負担した

飲食をした接待の場合、その席での費用は接待交際費です。さらに、接待をするためにかかった間接的な費用も交際費に該当するので、タクシー代も接待交際費に含まれます。

接待交際費事例4.社員全員で親交を深めるために会議室で食事会を行った

この場合は社員全員で行った親睦会にあたるため、社内交際費ではなく福利厚生費で処理をするのが一般的です。同様に、社員全員に行く機会が均等に与えられている社員旅行や忘年会も福利厚生費に該当します。

税制改正による接待交際費の変化と事例のまとめ

なぜ政府は税収減に繋がる接待交際費の税制改正を行ったのでしょうか。

一番の理由は景気回復です。景気が良かった頃とは違い、企業が接待交際費を使う機会は格段に減りました。景気悪化とデフレの影響で「お金を使う=悪」という風潮が強まったせいもあるでしょう。

これら一連の接待交際費における税制改正によって、これまでよりも接待交際費を使う機会が多くなれば遊行熱が高まりますし、夜の街の活性化がそのまま景気回復に繋げられる、というのが政府の狙いです。

この税制改正に対して、「お金を使う=悪」の図式をそのまま当てはめている一部批判的な意見も見られますが私はそうは思いません。

しっかりとした事業計画と資金繰り計画の範囲内であれば、社内であろうと社外であろうと仕事と絡めた楽しみを見出しても良いのではないかと思います。

お金を持っている人達が持っていない人達に均等に配ることはできないため、ある程度お金が回るこの制度は会社が貯めこんでしまうよりも健全です。

とは言え、必要以上に使ってはキャッシュがなくなってしまいます。節税はあくまでも利益が出ているから行うことです。以下の様にならないよう注意してください。

参考:
税金…社会保険…請求…給与…払えない時の3つの対応方法

楽しみは事業計画の範囲でほどほどにしておきましょう。

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